忍者界にとって期待しかない「国際忍者学会」の全貌と設立総会潜入レポ

なんとなんとなんと…

忍者のみに関する国際的な学術研究を推進する学会「国際忍者学会」が設立しました!

今回潜入したのは、伊賀サンピアホテルにおいて行われた国際忍者学会の設立総会。 総会には約200名以上の人が訪れました。

国際忍者学会は果たしてどんな活動をしていくことになるのでしょうか? 国際忍者学会の解説とともに、設立総会や記念大会のレポートをお届けいたします!

国際忍者学会とは?

国際忍者学会とは、忍者に関心を持って研究する団体や個人の調査や研究を推進し、情報提供をすることで会員同士の交流や親睦を図ることを目的とした学会組織です。

会員になると自分の忍者研究の論文を編集委員会に投稿して、審査を経ると年1回8月に発行される機関誌「忍者研究」に掲載してもらえます。

会長に中島篤巳先生、役員に若手も抜擢!

今回、第1期の役員として総会で選任されたメンバーです。

会長はなんとあの『完本 万川集海』『正忍記』の翻刻や『忍者の兵法』など、これまで偉大なる忍者本を書き続けてきた中島篤巳先生でした!

中島篤巳先生より今後の国際忍者学会の方向性などがお話されます。

中島篤巳: 日本の中で忍者を研究することは「学問になんてならない」という暗黙の了解がありました。世間の常識が忍者は非常識、世間の非常識が忍者の常識という特殊な存在です。他の先生方はさらっとおっしゃいますが、これを学問として学会設立まで持ち上げてきた功績は大変なものです。

私は忍術というのは総合生活術であると考えています。芸能・文化も含めて、いろんなことができないと忍者にはなれないわけです。そうすると時代の流れにうまく乗っていき、時代の変化が読めて、その変化に適合することが忍者の技法で、簡単に職が変えられるわけです。今の時代でいうとAIとか技術じゃないかなと思いますね。

その意味では技術面でも忍者は非常に多くのイノベーションを生んできました。研究のヒントにあるものは今は技術じゃないかなと思っていますが、多角的な面から忍者の研究が発展していければと考えています。

そして忍者研究といえばこのお方、山田雄司先生からも学会設立の意義についてコメントがあります。

山田雄司: 私は2012年から忍者研究に携わってきましたが、続ける中でいろんな方との連携が生まれました。これまで忍者の研究を独自にされてきた方が国内にも海外にもいらっしゃり、自分たちの研究成果を発表したいという意欲のある方がたくさんいらっしゃるのもわかってきました。

学会という形を取ることで、そのような場を提供するとともに、忍者という学問を世間にも認めてもらえるよう、忍者研究の品質を高めていくことが狙いです。そして研究の周辺にある観光や健康などといった分野にも波及していけるような学会にしていきたいと考えています。

そして注目すべきは、若干26歳にして学会役員に選任された井上直哉先生。

井上直哉:  忍者はいろんな作品などが入口となって認識されていきますが、一方で歴史的な存在でもありました。

ですがフィクションサイドから見た忍者のみでは、正しい歴史の中の忍者像があやふやになっているのが課題だと感じています。文学の中における忍者研究は吉丸先生がご専門ですが、フィクションサイドからの忍者がどうやって社会に影響しているかなども、この学会としては突き詰めていきたいと思っております。

山田雄司: 忍者というのは発想が柔軟でなければできない学問だと思います。あらゆるイメージや事実が存在するので、固定観念が強すぎると研究はできません。過去の忍者を再生産するだけでは忍者を捉えきれないのです。

それを打ち破る発想力や行動力が、忍者研究をする上では大変重要なことだと考えております。その意味でも若い方が関わることは非常に重要なので、井上さんには非常に期待しております。

国際忍者学会ということで、今後発行される機関誌「忍者研究」はグローバルになるのかについても、編集委員の吉丸雄哉先生がお話しされます。

吉丸雄哉:  投稿は日本語と英語のみで受け付けますが、英語で投稿された場合は英語にて掲載させていただきます。また、日本語で投稿されたものも英語の要約をつけて、英語圏の方がわかりやすいように編集を行う予定です。

「忍者研究」は忍者に関する研究成果を投稿いただき、専門家や委員の中でレビューした上で選定して掲載を行う形になります。最初の方は歴史や文学の観点からのものが多いと思いますが、ゆくゆくは食品や自然科学などについても会員の皆さまのお力を借りて、掲載していければと思っております。

8月の機関誌の発行、果たしてどんな人が提出してどんな内容が飛び出してくるのか、大変楽しみですね!

外国の先生方の記念公演もアツい!

そして午後からは設立記念大会として、記念公演が行われました。

司会は『忍者の末裔』の著者で国際忍者研究センターの高尾善希先生です。

てかこの錚々たる忍者研究者の先生オールスターズ的な感じが凄すぎて目が回る…!

まずはソウル大学からいらした金時徳教授より設立記念講演が行われました。

「海を渡った忍者たちは生きている」というタイトルで、内容を要約すると以下のようなお話。

  • 朝鮮系ソ連人のロマンキムが忍者という言葉を、始めてロシアに紹介した。
  • 「一枝梅(イジルメ)」という作品が韓国における忍者(盗賊、義賊)のイメージとなっている。
  • 忍者は文学、芸能的に見ても日本だけでなく国際的に活躍している。日本に限定してはいけない。
  • 荒山徹氏の忍者作品は、過去の作品の影響を受けながら海を越え、時代を越えて活躍している。

忍者は過去から現代においても、文学の世界で海を渡り、時代を越えて皆に愛されているんですね!

続いては研究発表として山梨学院大学のウィリアム・リード教授が「書から読み解く乱世を生きる術ーサムライと忍者編ー」をお話くださいました。

  • 日本人はからだ言葉をはじめとして、体の部位をよく使う。忍者の記憶術として、体のパーツに文字を刻み込むことがあった。
  • 筆を使って書くと5感+第6感を刺激しする。
  • 自分が書いた文字には性格が出るが、昔の武士の筆跡からも性格が読めてくる。西郷隆盛は頑固。
  • 一方、忍者の文書は楷書で書いてあり読みづらい。独自の性格を抑えていることが垣間見える。

忍者は報告した主君がちゃんと読みやすいように極力クセを抑えて、楷書で丁寧に書いているんですね!

これは言われて見れば納得ですし、書から忍者の性格を見出すというアプローチが斬新すぎてうなりました。

よし、忍者たるもの自分も今度から楷書で書こう!

そして三重大学の久松眞名誉教授から、「忍者の知恵を科学的知見から見る」内容のお話がされました。

久松先生は学会が嬉しすぎたのか、どんな風に研究をしたか&どれだけメディアに取り上げられたかに熱弁を奮い、研究結果のお話がほぼ時間がなくなるという状態になってしまいました!

研究の内容は以下の記事に詳しく書いてありますので、こちらをご覧ください!

歴史・文学・世界から見たこれからの忍者

そして最後は、今の忍者界をよく知る人たちによるシンポジウムです。

それぞれ歴史・文学・世界の観点から、過去、現代、そして未来の忍者についてお話いただきました。

山田先生からは過去の忍者研究の変遷から、今の忍者ブームがなぜ起こっているかをご説明いただきました。

  • 忍者研究を一番最初に行ったのは伊藤銀月。忍者の直刀説はここから作られていったのだろう。
  • 忍者はなんでもできると思わせたのは藤田西湖という忍者研究家。
  • 伊賀を忍者で町おこししたのに貢献したのが奥瀬平七郎。抜け忍のイメージは奥瀬さんの研究が元。
  • その後の忍者ブームは映画、アニメなどから起こった。
  • 今回はクールジャパンの流れ。各地域で忍者に関する取り組みが行われている。地元の歴史遺産がベースになった、ストーリ性を持った体験型の忍者が求められている。
  • 忍者は今、地域とのつながりと世界へ発展させられる可能性を持っている。忍者に関わる人がみんな楽しいと思ってできるといい。

歴史的裏付けとストーリー性、本当に重要ですね。忍者に関わる人みんなが楽しいって素敵な文化だ!

そして文学の観点からは、伊賀在住の作家・多田容子先生がこれからの忍者コンテンツはどのようになっていくかを語りました。

  • 作家として柳生十兵衛ものを書いていた。
  • 伊賀で忍者講座に出席して、出会いを得たり勉強になり、今は忍者に夢中になっている。
  • 室町時代から起こる服部半蔵から家康に従って江戸で天下を獲るまでを書きはじめているがいつ終わるかわからない。
  • そのため、2代目半蔵と家康の部分にスポットを当てたものに絞ってまとめている。
  • 忍者小説は今後「ナチュラル忍者小説」の時代になる。忍びも人間である。彼らにも生活があり、決して一人ではなく幅広いネットワークを構築した忍者というのが受け入れられるだろう。
  • コミュニケーションや人間関係を重要視する忍者。社会としてもそのようになってきている。
  • リアルでないものや不自然なものは受け付けられなくなっていると感じる。そんな忍者を書いていきたい。

忍者だって人間ってところ、めっちゃ共感です。ギャグ言ってた忍者だっていっぱいいたはず!

最後は三重大学国際忍者研究センター研究員のクバーソフ・フョードル氏が、海外から見た忍者像についての感覚を語ります。

  • 海外は日本に比べると忍者が常識にはなっていない。
  • 日本にもない資料を翻訳する人はいるけど稀。一般的には忍者は中国のものだと思っている人がいるほど。
  • 本や映画、忍術を教える道場などから海外の人に忍者は伝わっている印象。
  • 忍術は現代のスパイ技術とつながっていると捉えられているところもある。
  • 欧米にも忍術資料ブームが出て来ている。これは忍術書のドイツ語訳や英訳が出版されたから。
  • このことから一般でも忍者が議論がされるようになった。私も忍者研究や翻訳に貢献していきたいと思う

だんだんと忍者の本質に近づいている気配がありそうですね!浸透していくといいな…!

君も国際忍者学会の会員になろう!

国際忍者学会の今後、いったいどんな新しい研究結果が出てくるのかなど非常にワクワクしますね!

今回は設立総会でしたが、この後の総会は今後9月の開催となるようです。
次の開催地は佐賀県の嬉野市。ぜひとも参加したいところです!

そしてウェブ上でも国際忍者学会の入会募集がもうそろそろ始まると思います。

自分で研究成果を出さなくても、機関誌は必見の内容になること請け合いですので、興味ある方は参加してみてください!

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