みんなもう新学期は始まったと思うけど、夏休みの宿題はもちろん忍者研究で提出したよね。 きっとクラスでも「お前の自由研究、忍者かよ!すげーな!」って人気者になったことでしょうね。
企画展「The NINJA -忍者ってナンジャ!?-」でたくさんお勉強したことと思います。 まだまだ10月10日までやっている忍者展。 夏休みは終わっても忍者展は10万人を達成するなど、最大の盛り上がりを見せています!
記念すべき10万人の来場者は後藤優弥くん、7歳。 忍者展ではどんな忍術があるか楽しみにしてきたという優弥くんは、「手裏剣打ち」修行で手裏剣が的に当たったことや、跳躍力を鍛える「ヒマワリ跳び越え」修行でうまく跳び越えられたことが楽しかったそうです。
そして、夏休みの宿題は終わってもまだまだ終わらないのが三重大学の「忍者研究最前線」。 日本科学未来館Presentsの忍者・忍術学講座が行われたので、潜入してきました!
ストレスに立ち向かう忍者の知恵
数ヶ月前、忍者が結ぶ印にリラックス効果があることを突き止めた小森照久先生が、本日の忍者先生です。 今年3月に共同通信から配信されたニュース内容はこちらでした。
忍者のポーズ落ち着き効果 三重大教授、脳波を測定 2016年3月11日 (金)配信共同通信社 五郎丸ポーズ効果あり? 三重大医学部の小森照久(こもり・てるひさ)教授(精神医学)が、忍者が手を合わせて呪文を唱える「印」をした際の脳波や心拍数を調べた結果、ストレスが緩和され、落ち着いた状態になっていることが分かった。 印とは「臨・兵・闘・者・皆・陳・裂・在・前」と、九つの言葉を唱えながら、決められた形に指や手のひらを合わせること。九字護身法とも呼ばれ、道教や密教にルーツがあるとされる。 甲賀流忍術の継承者で、三重大特任教授を務める川上仁一(かわかみ・じんいち)さん(66)によると、敵地に赴くときや任務を完了した際に印を結ぶ習慣があったといい、口伝えで受け継がれているという。 ストレスを研究している小森教授は、忍者がどうやって気分を切り替えていたのかという問題意識から印に着目。昨年12月から3カ月間、忍術の修業を経験した5人と、経験したことがない10人に、それぞれ足し算を30分間繰り返させてストレスを与えた後に脳波などを測定した。 印を結んだ経験者と印を結ばない未経験者を比較すると、経験者の方がリラックスした際に検出される脳波や副交感神経の働きが活性化。経験者が印を結んだ場合と結ばなかった場合でも結んだ方がその傾向が表れた。 小森教授は「一般的に言われるリラックスとは少し異なり、集中力も維持されている。闘いに適した状態だ」と分析。「ストレス社会に生きる現代人に応用できるかもしれない」と期待する。 印をめぐっては、ラグビー日本代表の五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)選手がキック前に似たポーズを取ることで知られ、小森教授は「共通点があるかも。ぜひ、一度脳波を調べてみたい」と話している。 分析結果や実験時の映像は7月~10月に日本科学未来館(東京都)で開かれる企画展「The NINJA―忍者ってナンジャ!?―」で展示される。
忍者は特殊な過酷なストレス状態に置かれていた者たちであり、独自の知恵を駆使してストレス対処をしていたと考えられます。 忍者のストレス対処法にはきっと生き延び得る術がたくさん隠されているはず! と仮説を持った小森先生が行ったこの脳派を使った研究内容を惜しまず教えてくださいました!
人間のストレス状態に関しては、大きく2つあります。
① 戦闘モード:困難をクリアしたり生存するためにはかかせない緊張状態。これが過剰だったり長く続くと問題。
② リラックスモード:戦闘状態を解きほぐすための休息状態。
戦闘モードであることは人間の生存のためには必須だけれど、うまく休息モードにしないと耐えられなくなってしまうことから、いわゆるONとOFFの切り替えが健康の秘訣だと小森先生は語ります。 いかにONモードからOFFモードに切り替えられるかのヒントは、過酷な任務を無事に生き延びて成し遂げなければならない忍者であればきっと持っていたはず。 そこで注目したのが忍者の「印」と「呼吸法」だったようです。
息長(おきなが)という呼吸法
短く吸ってから息を細く長〜く吐く「息長(おきなが)」という呼吸法があります。 訓練の方法は鼻の頭に細く裂いた紙をつけて、弱い息でたなびかせ続けること。 上達すると運動直後も呼吸を整え、呼吸音を消すことができるらしいのですが、最初は安定するまでは酸欠になって苦しいそうです。
それもそのはず、1分に1回か2回の呼吸しかしないのだとか。 川上先生もその後に得られる効果を知っていたから苦しくても訓練したということで、なかなか生半可な覚悟では身につけられそうにはありません。
この内容を5人の熟練忍者の方達に行ってもらい脳派を解析したところ、なんと全員が眠気を表すθ波が増加しているにもかかわらず、リラックスや集中するときに出るα波も増加し、大変不思議な「一種の瞑想状態」に入ったのだそうです。 川上先生をはじめとした忍者の方たちは「太陽に向かって一体になっていくイメージだ」と語っていました。 息長をマスターすれば、うまくOFFモードへと切り替えられそうですね!
印のポーズはリラックスできるのか?
小森先生は、印について集中力を高めたのではないかと仮説を立て、ONモードを強めるのか、ONモードを弱めるのか、OFFモードを深めるのかを脳波測定によって調べることにしました。
実験方法は単純計算をずっとやり続けるクレペリンテストを以下の人たちにやってもらってストレスをかけ、その脳波にどのように差が出るかを調べました。
① 普通のおじさん
② 忍者の人たち
③ 忍者の人たちが印を結んだとき
結果として、①のおじさんや②の印を結ばない場合は集中力が下がりイライラも募っていたのですが、③の忍者が印を結ぶと、集中力を持続しながらもリラックス効果が脳派に見え、それが15分も継続したのです!
ということで忍者が印を結ぶ=リラックスや集中力の効果はあるということが証明されたわけです。
ただ、①の普通のおじさんに印の真似事のようなものをさせても、脳派は全く変わらなかったとのこと。結局は印についてもポーズさえすればON/OFFの切り替えができるというわけではなく、もっと大きな他の背景が必要あるんですよね。
川上先生は印を結ぶとき、「宇宙や神仏からエネルギーをいただいている」と語っていたそうです。リラックスし、集中して身軽に動いて任務を果たしたあとは、最後に2〜3秒の簡単な印を結んで「宇宙や神仏にお借りしたエネルギーを返す」ともおっしゃっていました。
このような科学だけでは証明できない精神世界の背景もありながら、忍者はON/OFFの切り替えを行い、任務の成功や健康を保っていたのだと考えられますね。
小森先生にプチNin-terview!
本日は貴重なお話ありがとうございました!脳派の実験で一番顕著に現れた忍者の方はどなただったのでしょうか?
小森先生: 実験の個人的なデータはお話しすることはできません。何をもって一番とするか難しいこともあります。正直脳派の実験は個人差が多く出るものなので、最初は実験として失敗するだろうと見ていました。ですがみなさんの結果の集計をして同様の結果であり、驚いたものです。ただ、ひとつだけ言えるとしたら川上先生の結果が非常に典型的でしたね。
結局はあの印のポーズがどうというより、信仰や祈りなどの精神的な背景が一番重要で、一種の暗示にあたるものでプラシーボ効果的なものだったと思うのですがいかがでしょうか。
小森先生: その通りですね。報道などで「忍者の印が五郎丸ポーズと同じだ!」と騒がれていました。スポーツ選手のルーティンも普段通りの実力を出すためのサインとしては効果はあると思います。
ですが普通のおじさんが印を結んだときの実験結果からも明らかで、ルーティンと忍者の印がたまたま効果が同じだったかもしれませんが、忍者の印はそれとは違う精神的な意味合いを持っています。川上先生や他の忍者の方達も「宇宙や自然・神仏からのエネルギーをいただき、返しているんだ」と口を揃えておっしゃっていました。宗教とまでは言いませんが、科学では証明できない信仰心がリラックス効果をもたらしているのではないかと考えています。
そのような忍者の方たちを実験で目の当たりにして、先生は忍者にどんな印象を持たれましたでしょうか。
小森先生: すごい人たちだと思いましたね。実験をずっと見ていて、私も真似をしてみようとしましたがとてもできるものではありませんでした。彼らはこの実験でお呼びするまで、誰かに見せるわけでもなく密かにこれらの鍛錬をやっていたということになります。過去の英知を受け継ぎ、伝承していることは大変貴重なことです。川上先生がもう後を継がせることはないとおっしゃっていますが、そう言わずにぜひ伝承していってほしいと感じました。
私も大変そう思います…。貴重なお話、ありがとうございました!!
やはり印というのはそのポーズをすればいいのではなく、それぞれの手のポーズが仏様を意味していて、「彼らが守ってくれるから大丈夫だ!」と暗示をかけたり、彼らのご加護をお祈りすることが重要だったのですね。五郎丸のルーティンとは絶対違うものだろうと思っていたので、今回の小森先生の講義をお伺いしてスッキリしました。
科学では語りきれない部分ではありますが、忍者の本質を語るのに密教や修験道から来る精神面を外すことはできないと思っています。
みなさんも印で精神統一をするときは上辺のポーズだけではなく、しっかりとその印の意味を考えながら結ぶとON/OFFの切り替えができ、ストレス社会を乗り切っていけるかもしれませんね!
世界各地で活躍する諸将の皆様へ、Ninjack.jpを通じて各地の忍者情報を密告する編集忍者。忍者に関することであれば何でも取材に馳せ参じ、すべての忍者をJackすべく忍んでいる。