第8回の手裏剣大会の団体戦で、見事準優勝に輝いた「四季の森CROWS」。
準優勝のチームを引っ張った大将は、なんと73歳のご老忍でした。
彼の名は、武蔵一族および四季の森武道塾で修行を重ねる忍者・京雀さんです。60を超えてから忍者の道へと進んだ彼を突き動かしたものは一体なんだったのか。
すべての忍者をJackするインタビュー企画「Nin-terview」第36弾をお楽しみください!
忍者は変革の時代を迎えている
こんにちは!手裏剣大会お疲れ様でした!京雀さんはいまおいくつなのですか?
京雀: 73才です。
お元気ですね!京雀さんはいつ頃から四季の森に入られたのですか?
京雀: 2年前に武蔵一族の東京タワーショーに参加したときに、大和柔兵衛先生、柔兵衛先生のお嬢様と佐助さんの演武を拝見し、その演武があまりにも素晴らしかったので是非教えを請いたいと思い入門しました。御三方の人柄にも魅せられましたね。
ということはもともとは武蔵一族の忍者だったのでしょうか?
京雀: 英語の講師をやっておりまして、代表のバネッサと語学学校の同僚だったのです。バネッサと廊下で立ち話していたときに「忍者で国際親善をしたくて、武蔵一族を立ち上げるから手伝って欲しい」と聞きました。私もずっと合気道をやっていましたので、面白そうですしお手伝いをすることに。安請け合いの京雀です。口が先で行動は後からになります。
外国人向けのツアー体験をやりだしてから、一人の老忍者として体験の担当をしておりました。他の忍者がいるときは通訳に回ったりして活動していましたね。あまり熱心じゃない忍者なので武蔵一族の道場の名札では下の方に追いやられてしまっていますが(笑)
江戸隠密武蔵一族の初期メンバーの方だったんですね!
京雀: バネッサのお父さんにもあったことがあり、手裏剣のようなものを作っていた「怪しげなオヤジだな」と思った記憶があります(笑)
バネッサがね、私にボソっと言うんです。「京雀さん忍者だから刀やらないとね。」とか「忍者だったら杖もできないとね。」って。代表にそんなこと言われたらやりにいかないとダメじゃないですか。あ、ちなみに20年くらいの友人なので呼び捨てにしちゃってますけど。
それで結局太刀、小太刀、棒術、体術、手裏剣、精神修行、丹田力なんかをいろんな道場に行って稽古するハメになりました。でもバネッサなんもくれないんだよね(笑)
…いや、失礼しました。高齢のため、今思い出しました。バネッサは数秒考えて、私の忍者名「京雀」をくださりました。そして鉢金も。この2つは今も大切にしてます。
素敵なものをもらいましたね!昔から忍者はお好きだったのでしょうか?
京雀: 子供なりの憧れで「猿飛佐助」がアイドルでした。当時、猿飛佐助がラジオ放送でやっていたんです。合気道は25年以上やっているのですが、よもや自分が60を過ぎてから忍者修行するとは夢にも思いませんでしたが(笑)
佐助にラジオ版なんてあったんですね…。長く生きられている京雀さんから見て、昔の忍者と今の忍者、イメージが変わったことはありますか?
京雀: 今の忍者は明るくなったなと感じることが多いです。武道をやっている人は、他の武道について無関心ですし、あまり他流とは交流しませんよね。他の流派に行くと先生も怒っちゃう場合が多いと思います。
それに比べて、忍術に関してはオープンです。忍者は武蔵一族にいようが、四季の森に行こうが、甲賀の人と会おうが自由ですよね。この前の手裏剣大会もオープンさは顕著でした。「こういう人は入っちゃいけない」などの服装の規制もなく、奇抜な忍者もいっぱいいて忍者はおもしろい時代になったのではないでしょうか。忍者の変革の時代ですよ、これ。
忍者界にも変化が訪れているんですね〜。ちなみに忍者のどういったところに惹かれますか?
京雀: 己の存在を消すところと、どんな任務であれ生きて生還するところでしょうか。生命を大事にし、闘いは極力回避するところにしびれますね!
私も体術、合気道、居合道、杖道など本当はかっこいいのが好きなのですが、目立ちたがりな性格的には放下師にしかなれないようです。傘回しや皿回しなどをやらないとならないですね。あと、私の奇行としては、乗り物の中で退屈している子供にアニマルバルーンを作ったりしてあげたりします。
もう完全に放下師じゃないですか(笑)
団体戦は戦略的チームワークで臨んだ
手裏剣打大会の団体戦についてお聞かせください。どんな練習をされましたか?
京雀: 投擲は四季の森の道場で練習させていただきましたが、特に重視したのは「イメージトレーニング」でした。最後の1打で的に当てるイメージをチームで醸成していたのです。
Ninjackさんも見られたかもしれませんが、4枚打ったあと最後の1打を打つ時は、必ず観客の中の四季の森メンバーの誰かが「京雀!」って叫んでいました。これをルーティン化することで、誰かが自分の名前を叫ぶと的中するイメージをつけて、ここぞとう時に決めることができたんです。
部活動で高校の監督たちが行うサインのようなものですね。ヒットエンドランでいけみたいな。つまり私たちのチームは、会場で見守る柔兵衛先生やメンバーとのチームワークであそこまで行けたんだと思っています。
たしかに言われてみればそうだったかも…
京雀: 聞いてよかったでしょ。ほら、私は面白い人間だから。
そ…そうですね…(?) 緊張などはされましたか?
京雀: チームの仲間と柔兵衛先生初めて大勢の方から応援して頂きましたので、緊張感は和らいでました。
初戦から3回戦まで、そして準決勝・決勝と順当に行ってましたね!
京雀: 的に手裏剣が一打刺されば上出来と思ってましたので、ついにここまで来たかと満足感に浸っていました。鐡左さんなんて4試合目で初めてマトにあたったんだよ。コロコロと転がってばっかりで…あれもすごいですよね(笑)
3回戦目に柔兵衛先生に指圧をしてもらって「今日は寒いからすぐ肩が固まってしまう。ここからは”連投”でいきましょう」とアドバイスがありました。あの時は本当に寒かったですからね。それもあって準決勝の4試合目もいい投擲ができました。
手裏剣の連投…これは当日、誰もやっていない私の特技で、素早く手裏剣を連続して投擲することです。こうすると手裏剣を打つに従い、心と的が段々繋がります。柔兵衛先生の的確な助言から成せた結果でした。
柔兵衛カントク…!おそるべしですね!迎えた最終戦はいかがでしたか?
京雀: 投擲は全て後攻で打つイメージだったのですが、準決勝と決勝は私たちが先行でした。私は2枚打ち込み30点でしたが、相手は50点を軽く超えてきました。自分は実力を出し尽くせましたが、単純に相手が強かったと思います。でも決勝戦まで進めて、やり遂げた満足感で一杯でした。
次回の目標を教えてください。
京雀: 次は個人戦で決勝に行きたいですね!
ちょっと痛いんですけど
今後京雀さんがやっていきたいことを教えてください。
京雀: 手裏剣に関しては、心技体を更に突き詰めていきたいね。あと、私は人が痛がることが好きなの。人が痛がるの見ると喜ぶの。ちょっと腕貸してみて。このツボ押すと、ほら痛いでしょ。
え…?ちょっと痛いんですけど何するんすか(笑)
京雀: そのまま深く呼吸をしてください。そうすると痛みが和らいで10分の1になっていきます。肩も回してごらん。軽くなってるでしょ?
あ、確かに痛み和らいできたし肩も軽くなりました!驚かさないでくださいよ(笑)
京雀: これは合気道のやつなんだけどね。本当は真面目なんだけど、こういう驚かしつつも楽しく学べる知識なんてのを教えていきたいですね。80歳になったら指一本で相手を制するようになりたいけど、なれそうにないね(笑)
応援しています!そのほかにやりたいことはありますか?
京雀: 忍者っぽい組手をやって、どこかで披露したいね!できることなら豪華客船で忍者ショーをやりたいです。柔兵衛先生からはまだ未熟だからやるなと言われているけど、勝手にどっかでやっちゃおうと思ってます。これ柔兵衛先生に内緒だよ。
いや、ネットに上がっちゃいますよw そんな柔兵衛先生のご指導はいかがですか?
京雀: 柔と剛を兼ね備えているすごい人ですね。人格者でもあるし、本当にためになります。そして心から平和を願っている方です。ただ…私はこんな高齢なのに、指導に容赦がないのが思いやりはないですね(笑)
そんな陰口叩いて怒られても知りませんからね
京雀にとっての忍者
京雀さんにとって忍者とはなんでしょうか。
京雀: 与えられた使命を完結する者であり、自分を生かすのもそうだけど、他人も生かす者かな。やむをえないときはあるかもしれないけど、人の命も染み込んでいる気がします。その点は侍とは違うんじゃないでしょうか。世界大戦のとき、日本の軍隊の手帳には「捕まったら死ね」って書いてあるのに対し、アメリカ軍の手帳には「お水ください、食べ物ください。」って日本語て書いてあるんだよ。つまり「生きろ」ってこと。忍者の精神と一緒だったんじゃないかと思っているのですが、忍者は、非常に先進的な思想なり精神を持っていたのかもしれません。
いい殿様は戦争したくないんですよね。戦争すると農民が痛めつけられる。戦争するとお米ができない。となると家来も養えない。いい大名は、戦争しないために諜報活動をしていて、それを担ったのは忍者です。悪いこともしたかもしれないけど、戦を事前に食い止めることで、忍者は多くの命を救っていたと思うんですよね。
読者の方に一言お願いします!
京雀: 忍術も貴重な日本の文化です。皆様の努力で、一般の人々の間にはマンガでない真の姿の忍者が理解されつつあります。しかし、御自身の忍術文化も確立していくことが大事だと思います。最近、非常に個性豊かな忍者にお目にかかリますが、これは素晴らしい文化の発信ですね。白い忍者とか金の忍者とか…「俺が忍者だ!」っていうのもいいじゃない。もしかしたらそうやって人の目を引きつけて諜報活動しているのかもしれないですね。
編集後記
高齢にもかかわらず、まだまだ精力的に忍者を吸収していこうとされている京雀さん。
ちょっとお茶目でいたずら好きですが、やはり長年生きてこられた知恵は的確に忍者を捉えている気がしました。
柔兵衛先生に見つからないように、いつか忍者ショーとかでお目にかかってみたいものですね!
世界各地で活躍する諸将の皆様へ、Ninjack.jpを通じて各地の忍者情報を密告する編集忍者。忍者に関することであれば何でも取材に馳せ参じ、すべての忍者をJackすべく忍んでいる。