「できないでしょ」の言葉に憤慨して破ったギネス記録
ここで隣で聞いていた肥前夢街道の運営会社・株式会社マールの専務取締役である河野さんが説明してくださいました。
河野: 打ち合わせが終了したら「河野さんだけ残ってください」と言われ、その後私とテレビ局の人だけで打ち合わせ続行だったんです。その際「本当の台本はこちらです」と分厚い台本の束を渡されました。どうやら本人には直前まで言わずに、失敗させてイジりたかったみたいなんですよ。
で、最初はギネス認定員を呼ぶ話ではなくて「頭目がその人の前だとガチガチに緊張する人いませんか?」って聞かれたんですよね。相当緊張させたかったみたいで。「芸能人だと千葉真一さんですかね〜」と答えたのですがそれは実現せず、結局ギネス認定員を突然呼んだら緊張するだろうという話になり、ギネス挑戦の流れとなりました。本番の15分前くらいに、プロデューサーの方と「頭目、実はギネス認定員呼んでます」って伝えたんですよね。
剣源蔵: もう「聞いてないよ」って言ったら「言ってませんもん」って言われて(笑)。「でも生放送だしギネス認定員呼んじゃったからお願いします」って無理矢理やらされましたよ。その前に猛特訓してたのは1年前だったので、その間はりんご1個くらいしか斬ってないし。「もしギネス記録超えちゃったらどうする?」って聞いたんですよ。そしたら「いや、超えないから大丈夫ですよ」って。そこでカーッと来て、何としても記録超えてやろうと決心しましたね。河野さんから弦さんから葉隠一族の全員まで、みんながみんな私を騙してたんですよ!
河野: ご覧になられたかもしれませんが、結局挑戦の1回目は28個のタイ記録という中途半端な結果で、なんとも言えない空気になっちゃったんですよね。当時はタイだと記録になるのかならないかも全然わかってなくて、この事態を想定していなかったんです。本当はあの中継は8分の予定だったんですが、結局このままでは終われないということでもう1回チャレンジとなり、15分に伸びました。そしたら頭目がギネス記録破っちゃうものだから、尺は予定の2倍オーバーするわ、ギネス記録はとっちゃうわで、目論見からは大きく外れてるので、その後佐賀テレビがフジテレビにめちゃめちゃ怒られてましたよ(笑)。自分も疑われて「練習させたんじゃないですか?」って言われました。
剣源蔵: 1個しか斬らない予定だったから練習なんてしてなかったですよ(笑)
河野: でもこれでこういう流れの方がいいんじゃないかなってのは思ったんですよね。それ以外のギネス挑戦は「記録破ります!」って宣言して練習して失敗して来ているので、逆にぶっつけの方がうまく行くんじゃないですかね(笑)
剣源蔵: 確かに他の挑戦の場合は練習しすぎて腱鞘炎になったりもしましたからね。結局練習しなかった1回だけがギネス超えできたわけですから。
やばい、おもしろすぎる!!頭目は無茶振りの中で成果を出して来たんですね。聞いてなかったとはいえ、ギネス記録を塗り替えたわけですが、そのときはどんな心境だったのでしょうか?
剣源蔵: 「もうこれ以上りんご斬らなくていいんだ」というのが正直な気持ちでしたね。それともう1つは「自分の得意分野が1つできた」とも感じました。忍者としての必殺技ですね。
でも僅か4ヶ月で記録がまた破られてしまいましたね…その時はどんな気持ちだったのでしょうか?
剣源蔵: 「別に抜かなくてもいいのに」って思いました。また練習せねばいかんのか、と(笑)
河野: ギネス記録というのは1番になってしまうともうその先がないので、ニュースリリースのネタとしては死んでしまうんですよね。記録を抜いたのがアメリカ人だったので、刀の競技でアメリカ人に忍者が負けたわけで、またリベンジとかで話題を盛り上げることもできるので、私としては嬉しかったですよ。でも抜くとまた抜かれるから次はタイ記録にしてください(笑)
剣源蔵: こっちは必死なんだから狙ってタイ記録とかできないっての!
はははw 頭目はこれからりんご斬りどうしていかれるおつもりですか?
剣源蔵: やっぱりそこに記録があれば破りたいですよね。日本人でしかも忍者なのに、アメリカ人に刀の競技で負けているのはカッコつかないですよね。まぁもう練習はしませんけど(笑)
福岡ドーム出入禁止となったゆるキャラ狩りの悪夢
他の活動についてお伺いしていきたいのですが、現在、九州忍者保存協会の会長もやられているかと思いますが、設立のきっかけはどのようなことからだったのでしょうか。
剣源蔵: 忍者のネームバリューをあげたかったのと、PRの効率化、そして九州で忍者やってる人たちと連携して何かやりたかったんですよね。九忍会のみんなもギネス記録挑戦のときには応援に来てくれましたね。
九州忍者保存協会の代表ということですから、トップとしてどんな意気込みで活動されているのでしょうか。
剣源蔵: 各地の町おこしなど、みんなそれぞれの地域で各自のミッションをもって忍者活動をしています。NPOの活動としては今は嬉野がメインとなっていますが、仲間と一緒に各地で忍者を盛り上げたりとか、忍者になりたくてもなれない人を巻き込んだりとか、そんな活動をしていきたいと思っていますね。これまでもみんな助けてくれたので、できる範囲でこちらも助けになるようなことをしていきたいです。
スリッパ温泉卓球大会の審査委員長なんかもやられているのですか?
剣源蔵: これはもう7年間ほどやっていますね。毎月最終日曜の夜20時から、温泉宿のお客さんや宿の方を交えた卓球大会があるんです。ラケットはスリッパで。最初旅館の方から「審判で盛り上げてくれないか」と話があり、少しずつ少しずつみんなで盛り上げて来ました。お客さんからは「なんで忍者いるの?」って不思議がられますが、嬉野の町を盛り上げていくために地域の方達と一緒に頑張っています。
あと昔「ゆるキャラ狩り」なんて活動もされていましたよね?僕はそれで頭目を知りました。
剣源蔵: それも河野さんが考えたのを言われたとおりやってただけです。
河野: また私ですかw 当時忍者で仮想ライバルを考えたときに、日光江戸村とかのはずなんですけどなぜか「ゆるキャラって人気あるよね」ってことになって、いつのまにかすり替わってしまったんです。「あいつらのせいでお客さん少ないんだよね」って(笑) となるともう果し合いするしかないじゃないですか。
剣源蔵: もう言いがかりもいいところですよ。
河野: 当時Twitterが大流行だったんで、頭目の知らないところで頭目のアカウントでゆるキャラのTwitterアカウントにガンガン喧嘩売ってました(笑) 「これから狩りに行くから待ってろよ」的な感じで。
剣源蔵: もうだから市役所とかいくと、戦おうとゆるキャラが待ち受けてるんですよ。私は何も知らないのに。
河野: 最後の方は向こうから「狩りに来てください」とか逆オファーもあるくらい盛り上がったんですよ。ただこの企画には1つ欠点がありました。対決までのTwitter上での絡みはすごく面白いのですが、実際の対決イベント自体があんまり面白くないんです(笑) 頭目は何も悪くないんですけど地味なんですよね。これがあんまり長く続かなかった原因だと思います。
でも一番ひどかったのは福岡ドームで行われたゆるキャラのマスコット徒競走ですね。ゆるキャラが走って競争して、1位になるとPRタイムがもらえるというコーナーがあったんですが、なんと頭目がエントリーもしてないのに勝手に走って優勝しちゃったんです。もうみんなドン引きで控え室とか悲惨でしたね。頭目は福岡ドーム出入り禁止ですよ(笑)
剣源蔵: 本当はゆるキャラをスタート地点まで誘導する係としてサポートで行ったんです。でもどうしてもゆるキャラ狩りのイベント告知がしたくてしたくて。河野さんに冗談で「走っちゃえば?」と言われたことを思い出して、スタートの合図とともにエントリーもしてないのに走ってしまいました。もう独走でしたね。
河野: まさか本当に走るとは思わなかったですよ。キャラの中にも走れるキャラはいるんですが、普通みんな気を使って全力で走らないんです。そしたら頭目が優勝しちゃって、係の人から「PRする人を呼んでください」って言われたんでしょうね。頭目がゴール付近で見守ってた僕の方を指差してくるんですよ。もう絶対怒られるんだと思って、一目散に逃げました。
剣源蔵: 忍者だし喋ってはいかんと思ってたんですけども、河野さんが逃げちゃうからもう私が喋っちゃいました。周りの観客からも「おい忍者、エントリーしてないだろ!」とヤジをもらいまくりましたね。
いや、これはひどいwww しかしなんでゆるキャラ狩りは終わっちゃったんですか?
剣源蔵: ブームの限界を迎えたんですよね。その先盛り上がるイメージが見えてこなかったので「早く終わろう」と言って終わりました。でもあれをやったおかげで知名度は上がりましたね。それにしても全部決まってから企画が降ってくるのは正直なんとかならんのかと思います(笑)
でもそれを全部受け入れてやってしかも結果を出すからスゴイですよね!
河野: でも一度兵糧丸だけで1週間生活してくれないかとお願いしたことがあるんですが、それだけは断られました。絶対面白いと思ったんですけど。
剣源蔵: 寝るよりも飯を食うのが好きなんでそれだけは断りましたね。ふざけんな、と(笑) でもそれ以外は受け入れてなんでもやります。
剣源蔵にとっての忍者
今後剣源蔵としてどんな忍者になっていきたいですか?
剣源蔵: もう50歳になるんです。忍者として続けたいというのもありますが、名を残したいですね。死んでも「剣源蔵という忍者がいた」ことを覚えていてもらえるような功績を残したいと思っています。そして若い人を育てていきたい。もっと忍者が面白いことを若い子にわかってほしい。そういうのが伝えればいいと思います。また、伊賀・甲賀に並ぶ佐賀の忍者というのをもっと知ってほしいので、そのために剣源蔵として活躍をしていきたいと思っています。
剣源蔵にとって忍者とはなんでしょうか。
剣源蔵: 私は今このテーマパークの会社に雇われている忍者です。ですから私の殿は社長。忍者はやはり殿に忠誠を誓う者であり、それは自分の得意分野を使って殿が目指しているものを実現できるようにすることが忍者なのだと思います。私も社長には感謝しているし、私も会社の利益になるように自分の必殺技を活かして働いています。同時に佐賀忍者の頭でもあるので、その忠誠心や心構えが下の若い子達に伝わればよいのではと考えています。
Ninjack読者の方にひとことお願いします!
剣源蔵: 九州に、嬉野に忍者あり。一度佐賀忍者を見に来てください。乞うご期待!!
ありがとうございました!
編集後記
ギネス記録ホルダーになるまで相当な修練を積んだでしょうから、すごく厳格でストイックな方だと思っていましたが、もちろんそのとおりな面が大半ではあるものの、時に思いっきりバカをやる大変親しみやすい方でした。
これだけの無茶振りをこの歳になっても会社のためにとにかくやる。しかもそれで結果をしっかり出してくる。ギネスだってそうだし、ゆるキャラ狩りだってそうだったはずです。
これぞ忍者の鏡ともいえるべき姿勢なんじゃないかな、と思えて来ました。
福岡ドームでまた頭目をお見かけできるようになるといいですね!笑
世界各地で活躍する諸将の皆様へ、Ninjack.jpを通じて各地の忍者情報を密告する編集忍者。忍者に関することであれば何でも取材に馳せ参じ、すべての忍者をJackすべく忍んでいる。