忍者にはどんな人が向いている?「しのびに遣はすべき人の事」|軍法侍用集vol.3

前回は「武士のための忍者の使い方」について解説いたしました。

普通の人すらも忍者にできれば優れた武士なのはわかったけど、さすがに知らない人忍びにするのリスク高くない?どんな性質の人を忍者に使うのがいいとかあるんじゃないかな…

と思うちょっと不安なお侍さんもいらっしゃるでしょう。

軍法侍用集では「どんな人が忍者に向いてるかわかんないよー!」っていうお侍さんのために忍者に向いている人を教えてくれています。

それは裏返せば忍者になるために必要な素養ということですので、忍者を志す人は要チェックです!

忍者に必要なのは知+記憶力+コミュニケーション力

何かの情報を得て、いざという戦のときに味方を有利に運びたいとき。

そんなときはやっぱり忍者を使うのがオススメだというのはもはやある種の常識っぽくなっていますが、そんなときにどんな人を忍者として使えばいいのでしょうか。

軍法侍用集では、このように教えてくれています。

第三、しのびに遣わすべき人の事

しのびに遣はすべき人をば、よくよく吟味あるべし。第一、智のある人。第二、覚えの良き人。第三、口の良き人なり。才覚なくてはしのびはなりがたかるべし。

from 戦国武士の心得(ぺりかん社)

これは忍者として情報収集に当たらせる人を選ぶ時、よーく考えてその人を選びなさいと教えています。

そしてその選別の基礎となるのは以下の3つの要素が必要だというのです。

忍者には「1.知力」「2.記憶力」「3.コミュニケーション能力」の3つが必要だと言っていますね。

あれれれ?忍者って手裏剣や剣術とかの武術とか、塀を飛び越えたりする跳躍力とか、早く走るための脚力とかそういうのが大事なんじゃないの?

いいえ、忍者が忍者として存在する意味は情報を確実に収集するということ。
別に戦わなくたって、手裏剣上手くなくたって、すごいジャンプできなくたって、必要な情報さえ入手できればいいのです。

敵地から情報を収集するといっても、忍び込んで聞き耳を立てたりするなんてリスクも高ければ、そもそも入手できるかどうかさえ確実ではありません。
だったら、敵に怪しまれないようにしながら敵に直接聞いちゃえばいいんですよね。

そのために必要なスキルは上に挙げたものであり、これらのスキルがあれば本来の目的である情報収集ができるわけなのです。

現代で言うならば、相手の話に同調できる雑学を知っていたり、取引先の重役のお子さんの誕生日を覚えててプレゼントを事前に持っていったり、接待で面白い話をしつつ相手からも情報を引き出したりして、相手から受注を勝ち取る「めちゃめちゃ成績の良い営業マン」みたいなもんなんです。

こんなの戦国時代だって天井裏から聞くよりもよっぽど確実ですよね。

忍者の要は「相手の信頼をいかに勝ち取れるか」

このスキルだけ紹介して終われればいいのですが、個人的にはその後の文章に結構大事なことが書いてあるのではないかと思っています。

それはただし書きでこんなこと。

・・・但し、その役人と定まり、常々此道心がけある人は他事には不才覚なりとも、吟味あるゆへに、ただ人の才覚よきほどは之あるべきなり。されば前にいふごとく伊賀甲賀衆然るべきなり。

from 戦国武士の心得(ぺりかん社)

忍びの役目を仰せつかることが決まったときに上記の3スキルの心構えを意識している人は、他のことが不得意であっても、大体人並みであれば忍者として使って良いってことが書いてあります。

これはつまり、「知識をちゃんと蓄えよう!」「記憶力高めよう!」「うまく話せるようになろう!」と常に心がけいて、他の武道とか作法とか他のスキルがそこまで得意でなくてもある程度できているならば忍者にしてOK!っていうことなんだと思います。

例えば新入社員が入ってきて、ちょっと仕事がなんでもできる人だったとしても「いややることちゃんとやってるんで」「これやって何の意味あんすか?」とか言って勉強もせず、コミュニケーションもとろうとしない人って可愛くないですよね。

そういう人は仕事はできるかもしれないけど、取引先や社内でも可愛がられなかったりする事があると思います。

逆に一生懸命メモとって覚えようとしたり、前に言ったことをちゃんと覚えていたり、話せば笑顔で答えてくれたりとかする人だったりしたら、少しくらい失敗しても可愛かったりするはずです。

どちらかというと、そういう人にいろいろ教えてあげたくなりますよね。

あくまでも想像ではあるのですが、忍者も結局はこれと同じで「いかに人の信用を勝ち取れるかどうか」が鍵となっているのではないかと思います。

その信用を勝ち取るためのスキルが、上述した3つのスキルであるということ。

これらのスキルの掛け合わせにより、とにかく「相手を信頼させることができる人」というのが忍者に最も向いている人ということになるのでしょう。

そしてそれが得意だったのが伊賀や甲賀の者達である、とも改めて書いています。

現代でも伊賀や甲賀に住む方々は話も面白いし、非常に頭も切れる人達ばかりで、思い返せばついつい色々話してしまっています。

これぞ忍びの血・・・さすがですね。

ただ一つ忘れちゃいけないのは「他のことも人並み程度であること」

走るのがめちゃめちゃ遅いとか、すごく不潔な身なりとかだと「お前いいヤツだから、あと一刻しかないけど今日だったら殿の屋敷連れてってやるよ」とかのチャンスが巡っても、追いつけなかったり屋敷に入れてもらえなかったりなどチャンスを不意にしてしまうかもしれません。

すごく得意である必要はありませんが、人並みの教養は積んでおいたほうが失望も少なく、尊敬につながることもあるので努力は怠らないようにするのが大事ですね。

みなさんも忍者を志すのであれば、しっかり勉強して世の中のあらゆる事を知り、脳トレやったりメモ取るなりで物事を覚え、人とたくさん話してコミュニケーション能力を蓄えていきましょう。

これは現代社会を生きる上でも絶対に役に立つスキルです!

なお、記述に対する解釈は筆者の読解力不足により誤っている可能性がありますので、そこのところよろしくお願いいたします。

参考文献

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