三大忍術書のひとつ『万川集海』の原典とされている忍術書。
『間林清陽(かんりんせいよう)』の正確な成立年や著者は不明だが、『万川集海』の序文に、「この万川集海は、始めから終わりまで『間林精要(清陽)』の要網を挙げて記し」とあることから、それ以前に成立したものであると考えられる。
『間林清陽』は、大勢に取り囲まれた際の切り懸かり方や、戦で退却する際に追手をどのように妨害するかなど、具体的な潜入術や戦闘術が多く記されていることが大きな特徴。 江戸時代に書かれた多くの忍術書では、諜報活動や奇襲行動にあたっての術技や心構え、道具の製作法や用法は説かれているものの、具体的な戦闘の術についての記載は少ない。 これは、忍術を孫子の「用間」(諜報)という兵法の理論に結びつけて、より権威あるものとして体系化しようとした流れのためだと思われる。このことから、『間林清陽』は江戸期よりも、さらに古い時代の忍びが使っていた戦闘術の内容が色濃く反映されているものであることがうかがえる。
長らくその所在が不明だったため幻の忍術書と呼ばれていた『間林清陽』だったが、2021年に滋賀県甲賀市の葛城地区にある神社から『軍法間林清陽巻中』が発見された。 題字に「巻中」とあることから、上中下巻のうちの中巻の写本にあたるもののようである。
今後、上巻や下巻が発見されればますます研究が進むことが予想でき、忍者・忍術研究業界にも大きな影響が期待できる注目の忍術伝書。
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