呪術、忍器、実戦、様々なジャンルのアソート伝書
『福島流忍術之書(ふくしまりゅうにんじゅつのしょ)』は、安芸・福島藩(現代で言う広島県)にて継承されていた忍術書で、戦国大名の福島正則に仮託(名前を借りる)されて名付けられている。はっきりとした成立年は不詳だが、奥書から寛政九年(1797年)以前に成立していたことが推測できる。
本文は、願った相手に好きな夢を見せることができる「夢相通」や、人の馬を病気にさせる「下馬落」といった呪術的要素の強い項目から始まる。一方で、火器・登器・水器などさまざまな忍器や、敵の城へ潜入する方法など実践的な内容が具体的に綴られもており、呪術・まじない・忍器・隠忍術・忍びの心得といった幅広い内容が記載されている。
本書は、前半と後半で一項目を二分割し、離して書かれているのが特徴。前半部分は各項の簡単な紹介・必要な材料のみが隠語などを用いられながら記載されていて、後半に隠語部分の解説・詳細な使用方法・精製方法が明かされるため、後半まで読み進めなければ内容の理解が困難な仕様になっている。
「東京国立博物館デジタルライブラリ―」にて公開されており、どなたでも閲覧可能。
本書の内容は、『引光流忍術口決』や『福島清繾流 武兵心得記』という他の忍術伝書とかなり似通っている。忍術書好きの方には、それぞれを見比べて細かな違いを探す楽しみ方もおすすめしたい。
『福島流忍術之書』記載の忍術の解説や、他忍術書との横断検索も可能な忍術・忍器データベースはこちら
Youtube上で行われた翻刻配信
再生リストはこちら