記念すべきNin-terview第30弾は「信長の忍び」の監督をされている大地丙太郎さんです。
「おじゃる丸」や「すごいよ!!マサルさん」、「NARUTOオープニング」などの監督を手がけ、ギャグアニメを監督させたら右に出る者はいない大地監督ですが、実は大の忍者好き。
去年、勝手にくのいちの日を制定したり、ご自身でくノ一のライトノベルを執筆したりとその忍者熱は止まることを知りません。
そんな大地監督の忍者語りや、信長の忍びでのこだわりなどを余すところなくお伝えします!
くノ一というのは素晴らしい
くノ一の日の記事がきっかけでこうしてお会いでき、大変感激です!あの盛り上げは最高でしたが、なぜ「くノ一の日」をやろうと思ったのでしょうか。
大地監督: あれはですね。僕も忍者大好きなんですけども、ここ何年かで再燃し始めたのです。直接的なきっかけとしては、ほら、Twitterとかで「今日は何の日?」って出るじゃないですか。2016年の4月4日あたりに「今日は4の日だな。4のひ、しのひ、しのび、お、忍びの日っていうのもありじゃないか?」なんて一人で勝手に妄想して盛り上がってたんですね。
そこでふと気がついたんです。「9月1日はくノ一の日じゃないか」と!当然あるだろうと検索したらなかったんですよ。「やった俺作っちゃった!!」ってもう舞い上がっちゃって、9月1日になるのを心待ちにしてたんです。
当日、Twitterでくノ一の日のハッシュタグを作って投稿したら、「今日はくノ一の日ということで…」とたくさんのくノ一さんが画像を載せてくださったんですよ。あれにはびっくりしました。たまに男も混じってましたけど(笑)
そうしたらNinjackさんが取り上げてくださって、自分が最初だったと知ってこれにも驚き、とても嬉しかったですねぇ。コメントの「写真のピントさえあってれば・・」とか「そうそうそう!」って同調してました(笑)
ご覧いただきありがとうございます!なんと、4月からずっと暖めていらしたんですね!くノ一でいうと監督が書かれている「くのいちせぶん」がおもしろいですよね。あんな状況になってみたいです(笑)
大地監督: 遡るとくノ一愛はそこに行き着くんですよね。あるとき急にネタを思いついたんですよ。
僕のアニメ監督の仕事はだいたいパターンが決まっていて、ギャグとか少女漫画なんですが、あるとき何を思ったかラノベの絵コンテだけという仕事が来たんです。僕が一番やりたくない苦手方面の仕事だったんですが(笑)仕事が来るのはありがたいことでしたのでやってみたら、意外と面白かったんですよね。何冊か読むことになったんですが、思っていたより面白い。ずっとライトノベルは遠ざけていたのですが「これも結構いいな」と思うようになりました。ラノベのパターンはだいたいどうしようもない男が女の子に囲まれるのがセオリー。そのとき「くノ一に囲まれたら凄くいいな…」と浮かんだんですね。
「くのいちせぶん」ってタイトルも決めちゃって、出版社にも提案したのですが「大地さん、ラノベの時代はもう終わりますよ」って言うんです。2年前くらいですが状況を聞いたら確かに厳しくて。そのときにTwitterでやったらどうかと提案され、おもしろそうなのでTwitterで始めたんですよね。後先は全く考えずに書き始めました。仕事が忙しくて不定期ですけども…
今すごくいいとこで止まってますよね。続きが気になっています(笑)
大地監督: 今は3話の途中ですね。もうちょっと・・・4話〜5話で終わると思います。なんとなくこっちの方向に着地かな、というのだけはあります。昔に比べると最近仕事が落ち着いて来たので、またそろそろ再開しますよ。早々に終わらせたいです(笑)
ひどい目にあってこその忍者
大地監督がお好きな忍者作品はやはり「忍者狩り」でしょうか? (そこにポスターが貼ってある…)
大地監督: 僕にとって「忍者狩り」がNo.1ですね。ただ、どちらかというと近衛十四郎好きから入っているので、忍者狩りは忍者モノ作品というイメージではありません。忍者モノのイメージでいったら一番は「忍びの者」のTVシリーズなんですよ。原作は読んだのですが、当時の東映は原作通りにはやらず全然違うんですけど本当に面白かったですね。
「忍びの者」は小説で、しかも2巻までしか読んでないのですが、五右衛門の描写とか最高ですよね!すごく読みづらかったですけど…
大地監督: あれいいですよね!僕も読みづらかったんですが3巻からはもっとひどいんですよ。この手の小説では珍しいんですけど、秀吉の朝鮮遠征を克明に描いてるんです。向こうに舞台が映ったシーンだと相手の武将の名前が読めないし、土地勘も全然わからない(笑)普通朝鮮のところそんなに細かく書きますか?作者の村山知義さんはすごいですね。読むのが辛いのですが大変貴重だと思いますよ。司馬遼太郎でも書いてないんじゃないでしょうか。
もうだって何よりも衝撃だったのが、加藤清正が向こうでやりたい放題やって、梅毒だか腎虚で死んだというすごい説が採用されているんですよね。ちょっとかっこ悪いなあ〜と…(笑)
腎虚ってテクノブレイクのことですよね…ほんと忍びの者はちょいちょい横道に逸れますよねw
大地監督: 第3巻から真田十勇士編が始まるのですが、この作品の凄いのは架空の真田十勇士をさも本当にいたかのように描くところなんですよね。
霧隠才蔵の出身地とかも妙にリアルで。確か和歌山の捕鯨が盛んな地域で生まれ、鯨にぴったりひっつく忍術が得意で、鯨の吹き出す潮の霧に隠れているから霧隠と呼ばれたとか書いてあった気がします。霧隠才蔵は本当にいたんじゃないかって信じてましたもんね。
そっから朝鮮に行っちゃって大変なことになるんですけど…あとがきで「朝鮮を書きすぎた」って反省までしてました(笑)
朝鮮のところ読みたくなってきましたw 昨年は真田丸もやっておりましたが、真田十勇士はやはりお好きなんですか?
大地監督: 真田十勇士のストーリーってだいたいは佐助と才蔵が主役級ですけど、残りの8人は自由じゃないですか。作品によってキャラクターも違うし、なぜか1人は必ず女性だったり、自由すぎておもしろいですよね。いつか十勇士モノの作品はやってみたいですね。
おぉ、監督の真田十勇士見てみたいです!監督といえばアニメですが、アニメで好きな忍者作品はありますでしょうか?
大地監督: 昔「風のフジ丸」にはハマってましたね!子供の頃、そのアニメが放送していたときに「劇場版 風のフジ丸」ってのがやるということで、新しい話とか、まだ放送してない話を最後までやってくれるのかと思って楽しみに見に行ったんです。そしたらアニメの第1話を映画で流しただけでした。「金返せ!」って思ったのがフジ丸の思い出です(笑)
それ詐欺じゃないですか(笑) 監督はコンテンツの中で忍者のどういったところに惹かれるんでしょうか?
大地監督: 「忍者狩り」と並んで好きなのが「柳生武芸帳 片目の忍者」に出てくる忍者なのですが、完全に影で暗躍して働き、命を落とすことも当たり前で気にすら止めず、地味に死んでいくところが最高ですね。敵を食い止めて「十兵衛様、先に行ってください」と当たり前のように死んで、十兵衛も「頼んだぞ」と当たり前のように先に行くんですけど、「頼んだぞじゃねーだろ!笑」って衝撃でした。
十兵衛も最後はボロボロで、敵は綺麗で、ギリギリの力を振り絞って勝つんですけど、犠牲になった忍者の連中の屍の間を飄々と帰って行くんです。その時に生き残ったもう1人が忍者の死骸を見てうろたえる中、十兵衛が「柳生に手向けの言葉はない」とか言うんですけど、とにかく死ぬのが当たり前みたいな扱いになっていまして。
「忍者狩り」もそうなのですが、残酷で無慈悲でそんなところに痺れてしまい、以降忍者の虜になりました。なので僕の中では忍者はひどい目に合わなければならないイメージが染み付いています(笑)
「NARUTOには二度と関わらないでくれ」と言われた
やはり忍者グッズとかも好きでお持ちだったりするのでしょうか?
大地監督: 今はどっか行っちゃいましたけど、太秦映画村で買った鉄製の手裏剣をいつもカバンの中に入れて持ち歩いてたんですよ。「忍者たる者、手裏剣持っていなきゃ行けない」って考えがあって(笑)
そしたら5年くらい前に台湾に仕事に出かけた時、空港の手荷物検査で呼び止められたんですよね。検査官が「あの、手裏剣お持ちじゃないですか?」って。完全に忘れててその時にその手裏剣は没収されました(笑)
「これは何ですか?」じゃなくて手裏剣って名指しだったんですね(笑) そんな忍者愛の中、アニメ監督の仕事の中で忍者作品も手がけられたと思います。監督が手がけたNARUTOのオープニングは可愛くてよかったですね!
大地監督: あの時は実は忍者熱が低かったときでしてね。羽田空港で手裏剣が没収されたすぐ後だったので(笑)
NARUTOの件はスタッフが知り合いだったので、お仕事をいただきました。かなり嬉しかったですよ。
でも僕に依頼が来たってことは「何か変なことを求めているんだろうな」と思ったので、変なこといろいろ考えてましたね。
原作も全部読み直してたら、岸本先生の落書きだと思うんですけど、ナルトがバイクに乗って飛んでる絵があったんです。それを絵コンテに入れたら「ダメです」って一蹴されました(笑)森の中を忍者たちが走るところがあるんですが、あれほんとはバイクで飛んでたんですよ(笑)
うわー!それ見たかったです! 僕は小・中学生くらいのときに監督の「すごいよ!!マサルさん」を見てたのですが、このNARUTOのオープニング見たときにマサルさんを思い出しちゃいました。
大地監督: いや、もうあれは完全にマサルのまんまです(笑)。
実はちょっと煮詰まっちゃってたんですよ。NARUTOの2個前くらいの別のオープニングで、ナルトが背中合わせで回り込むカットがすごくカッコ良くて、それを目指したんですがどうも追いつかなくて…
そのとき自分のことだからギャグを求められているんだ、とマサルをベースにしたんです。マサルのカットをNARUTOにどう置き換えるかだけを考えて作ったんですよ。
大丈夫かな〜と心配だったのですが、やっぱり一人怒って怒鳴り込んで来ましたね。「もう絶対NARUTOにかかわらないでください」って。いや、もうホントその方のおっしゃる通りで僕が悪かったです(笑)
他の方には評判がよかったのですが、そのときは落ち込みましたね。。。
僕はあの我愛羅まで踊ってるところとか大好きです!忍者作品のアニメ本編を監督されたのが初めてなのはどの作品でしょうか?
大地監督: 忍者作品自体はやったことないので「信長の忍び」が初めてですかね…。「十兵衛ちゃん」は忍者のつもりではやっていないので違うかなと。
あれ…監督がやられてた「ずんだ丸」も忍者作品ではなかったのでしょうか…?
大地監督: あー!ずんだ丸忘れてました(笑)あれはくだらなすぎて好きなジャンルなんですけど、忍者モノとしては認めたくないです(笑)
そんな…(笑)
忍たまのコスプレって最高だよね
以前から長い間おじゃる丸の監督されていらっしゃいますが、今はその次に放送されている忍たま乱太郎などについてはいかが思われますでしょうか?
大地監督: 番組としてはおじゃる丸の兄貴分ですから尊敬しています。作者の尼子騒兵衛さんが本物の忍者や時代考証にこだわっていらっしゃるので、そういった意味でも共感ができますね。
ただやっぱり忍者は死んでくれないと僕の中では忍者じゃないんですよね…。忍たま達を死なせるわけにはいかないし…。
やはり死してこその忍者なんですねw 忍たま死んじゃったらみんな悲しんじゃいますもんね。
大地監督: 忍たまといえば、忍たまが大好きなコスプレイヤーの女の子が知り合いなんですが、ほんっとクオリティ高くてその人のコスプレを見るのは大好きなんですよ!自分もコスプレイベントに参加したりするのですが、その人のことは先輩と呼んでいます。忍たまの話はついていけないんですが、もうすごく美しいんですよ。
僕もTwitterですっごく美しいレイヤーさんいるなーと思ってるんですが、もしかして日報さんですか?
大地監督: あ、そうです!彼女やはり有名なんですね。僕のTwitterの忍者衣装のコスプレ写真があるじゃないですか。あれは彼女に作っていただいたんです。
そうだったんですね!あの装束すっごくカッコいいなと思ってましたが、日報さんが作られたなら納得です!
大地監督: いやぁ彼女のコスプレはハンパないですね。普通の時も美しいんですけど、ずっとコスプレしてて欲しいです(笑)
ではいよいよ次は「信長の忍び」についてお伺いさせてください!
▼第2巻はこちら
世界各地で活躍する諸将の皆様へ、Ninjack.jpを通じて各地の忍者情報を密告する編集忍者。忍者に関することであれば何でも取材に馳せ参じ、すべての忍者をJackすべく忍んでいる。