書き手の人柄まで想像膨らむロマンの伝書。
『忍秘伝(にんぴでん/しのびのひでん)』は、『万川集海』『正忍記』と並び三大忍術書と呼ばれているうちのひとつ。正確な成立年は不明だが、永禄3年以降であるとされている。著者については服部半蔵正成だと言われているが、名を仮託した後世の作であるという説も存在し、未だ完全には明らかになっていない。
『忍秘伝』は全4巻からなっており、内容は忍びの由来からはじまり、火器、開器、水器、登器……と数多の忍具と諜報術が続く。『忍秘伝』の内容において特に特徴的なのは、その多くが口伝で詳細が不明であったり、メモ書きのように簡易的な記載しかされておらず、読み解きが非常に難解なところである。 なかには、忍具・忍術の名前のみが記載され、その他一切の情報が無いものまで存在する。
閲覧にあたっては、東北大学図書館狩野文庫所蔵の写本がデジタルアーカイブで公開されており、どなたでも無料で全文見ることができる他、伊賀流忍者博物館沖森文庫に所蔵されているものも「デジタルミュージアム 秘蔵の国伊賀」で公開されている。また、現代語訳も掲載の『完本忍秘伝』(中島篤巳,国書刊行会,2019)も販売されている。
読み解きがやや難解で、構成が整っている『万川集海』や『正忍記』と比べて現場的な印象が強いが、当時の人の息吹をより身近に感じることもできる親近感あふれる忍術伝書である。
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