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レポート
2016.09.15

忍者の動きを科学してみたら合理的すぎる結果が!

講演録
企画展
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いよいよ最終回!

忍者・忍術学講座 企画展「The NINJA -忍者ってナンジャ!?-」の展示を監修した三重大学の忍者教授を一同に集結させ、忍者研究の最前線を余すことなく伝授してくれた忍者・忍術学講座。早いもので今回が最終回となります。 寂しいですよねぇ・・・

忍者は伝書によれば「1日に150kmとか200kmを走った」と言われています。忍者だって人間ですが、果たしてそんな超人的なことは可能だったのでしょうか?

そこで最後は「忍者の動きを科学する」と題して、昔の人が使っていた身体操作がどれほど優れているのかを科学的に実証された脇田裕久先生の研究結果をご発表いただきました!

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脇田先生はご自身でも剣道教士を七段まで極め、定年まで三重大学で運動生理学を教えていたスペシャリスト。

果たして忍者の動きをどこまで解明されたのかワクワクしますね!


重力を使った「リラックスした動作」が重要


人はスポーツ選手でもそうでない人でも、より強く、より速く動こうとするときにはまず筋トレをしますよね。筋トレによって力をつけて動く、これが一般的なトレーニングの考え方です。

これももちろん間違いではないのですが、脇田先生が実験結果をもって提唱するのは地球上にある重力を利用した極めてリラックスした動き。 身体各部を自由に操るにはいかに力を抜くかが重要であり、これを知るには昔の人がずっと現代に至るまで伝えてきた古武術にヒントが隠されています。

オリンピックに出場する選手などもこの動きを活用しているらしいですよ! ではどんな動きなのかを見ていきましょう。


人間の身体のつくりから考えてみよう!


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刀を使うときなど腕の動きは大変重要ですが、そもそも腕ってどこから生えているのでしょう?

腕は胸骨と鎖骨をつなぐ胸鎖関節から生えていて、背中にある肩甲骨が肋骨の上をズルズルと動くようになっています。 腕を動かそうとするとまず上腕二頭筋辺りを意識しがちですが、肩甲骨が動きやすくすることが大事であると脇田先生。

より早い動きを身につけるには肩甲骨を柔らかくして、動かしやすくすることを心がけましょう!

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肩甲骨を動かしてみる参加者

みなさん一生懸命肩甲骨を柔らかくする動きを試しております!

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そして忍者が速く走るために必要なのは脚ですね。脚はいったいどこから生えているでしょうか。

脚はお腹と胸の間のみぞおちから生えています。 やはりより速く動くにはみぞおち辺りをを意識したほうが、よりしなやかで早い動きができるようです。

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そしてもっとも大事なのは重心です。 普通に立っているときは重心は下腹部にあります。

手を上げると重さが少し変わるので、重心も上がるようになります。

この重心や重力を軸として、腕や脚の付け根も意識してエネルギーの源のイメージとして動かすと・・・

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重心の大切さを語るために実験台にされる吉丸先生が踏ん張っていても、70歳の脇田先生に軽々とよろめかされてしまいました。 脇田先生にはまったく力を入れている素振りはありません。

重力をうまく使い、力を入れずに動く「忍者の動き方」は恐るべき効果をもたらすようです!


忍者の動きのコツ①:抜き動作


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筋力を使って地面を蹴って前進する動作を「蹴り動作」、筋力でなく重力を使って膝関節の力を抜いて前進する動作のことを「抜き動作」といいます。

これらの動作を女子大学生15名に行ってもらい、それぞれの動作がどれくらいのパワーやスピードを生み出すのかの比較実験が行われました。

  • 地面反力:地面に対してかけた力に対して、地面から帰ってくるパワーはどちらの方が強いか

  • スピード:どちらの方が速く移動できるか

  • 脚にかかる負担:着地時に脚にかかる負担はどちらの方が強いのか

これらを見てみたところ、なんと抜き動作のほうが地面反力が強く、スピードも速くて脚への負担も少なかったようです。 要するに抜き動作の方が、より少ない負担で最大の力とスピードを出せるわけなんですね。

バスケットボールやバレーボールなどのスポーツ界でも、この抜き動作は活用されているとのこと。 そして脇田先生は、忍者はこの動きを活用して150kmを1日で走るなど、より少ない疲れで速く移動ができたのではないかと推察されていました。

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抜き足・差し足・忍び足などもこれらの動きを活用されていたのかもしれませんね!


忍者の動きのコツ②:井桁動作


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古武術研究科の甲野善紀先生が提唱した「井桁術理」というものがあります。

これはひとつの関節だけを動かすのではなくて、井桁のように複数の関節を同時にちょっとずつ動かして連動させる動かし方のこと。イメージとしては重量挙げでバーベルを一気に頭上に持ち上げるスナッチのような動きですね。

逆にひとつの関節だけを動かすのを「ヒンジ動作」と言いますが、それぞれの動きでどちらがモノを速く動かせるのか比較実験してみたところ、これまたヒンジ動作よりも井桁動作の方がより少ないパワーで速くモノを動かす出来たようです。

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古武術で使われる動きがどれだけ理に適っているのか、科学的にも証明されたわけですね。


忍者の動きのコツ③:気合!


そしてなんと、「気合」についてまで科学的に証明しちゃうというサービスつき!

侍とかが「うおー!」って言いながら切り掛かったり、スポーツでも室伏広治がハンマー投げで雄叫びとかを上げたりしていますが、これも立派に効果が出るのだそうです。

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掛け声を発して気合を入れた時、気合がなかった時と比べて最大筋力がUPしているのがわかりますか? 声を腹から出すことによって、いつも以上のパワーがみなぎるのだそうです。


脇田先生にプチNIN-TERVIEW!


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理に適った古武術の動きを解説してくださった脇田先生にもプチNin-terviewをさせていただきました!

本日はありがとうございました!聞いていた感じですと、忍者だけじゃなくて昔の人はみんなやっていたように思いますがどうだったのでしょうか?

脇田先生:  はい、決して忍者に限ったわけではなく武士も農民もこのような動きは取り入れていたと思っています。ただ、忍者は午前中は農作業を行い、午後はトレーニングに時間を当てていましたから、誰もがやっていた古武術の動きをよりトレーニングをして身につけていたのは、忍者だったのではないかと思っています。

なるほど!極めるか極めないかの違いですね!1日で150km走るというのは本当に可能だったのでしょうか。

脇田先生:   全員が全員というのは難しいとは思いますが、忍者のようにトレーニングを行い、筋力も発達させて体の動かし方を突き詰めた人であれば不可能ではなかったでしょう。トレーニングを重ねれば不可能なことはないものです。

修行が大事なのですね。忍者展では「忍足の修行」体験ブースがありますが、あれをクリアするコツはありますか?

脇田先生:   膝の力をを抜けば行けるのではないでしょうか。私は時間がなくて試せなかったので残念でしたが…。

あれ難しいのでやってみていただきたかったです!しかし抜き動作も聞いているだけですとイメージがわかないですね。

脇田先生:   そうですか。では身をもって体験してもらいましょう。 私にタックルしてきてください!さぁ!

え…先生に向かってそんなことは…わかりました!思いっきりいきますよ!

超秘伝必殺忍術奥義 「Ninjackタックル」が炸裂!

脇田先生:   なかなか力がありますね。ではこれから抜き動作であなたを床にひれ伏してみせましょう。えいっ!

・・・!!

こうして僕はいつの間にか地面にひれ伏していました。。。

後ろでは朝日新聞者の忍者展企画担当の方が、うっすら笑いを浮かべています!!

先生は70歳なのになんという恥ずかしさ!

ハァハァ…思いっきり踏ん張ったのに…

脇田先生:   これが抜き動作です。私はまったく力を使っていませんよ。自然の重力に身を委ねること。これこそが極意です。イチローやマイケルジョーダンなど、一流のスポーツ選手もまったく力は使っておりませんからね。

恐れ入りました…以後精進いたします…! では最後に先生は研究などから忍者についてはどのような印象を持たれるようになりましたか?

脇田先生:   本当にすごい人たちですね。体の動かし方だけでなく、そのスキルや精神に至るまであらゆるものが忍者には凝縮されています。忍者のことは超人と言ってもまったく過言ではないでしょうね。

実演までいただきありがとうございました!

*

非常に理に適っており、現代でもスポーツ選手たちにも活用されている古武術の動き。

少しでも取り入れるだけで、疲れづらく最大のパワーとスピードが出せるこの動きは使わない手はないですね!

一度コツを掴めば意識しなくてもできてくると思いますので、興味がある方は取り入れてみてはいかがでしょうか。


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企画展「The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」公式ホームページ

執筆忍
”すべての忍者をJackする”生粋の忍者オタク。忍者に関するあらゆることを実現していきます!
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