映画『忍びの国』は、忍者映画としてかなり良い入口です。大野智が演じる無門は、強いのにだらしなく、怖いのにどこか愛嬌がある。忍者を「影の殺し屋」としてだけでなく、生活も欲も弱さもある人物として見せてくれるところが、この映画の大きな魅力です。
題材になっている天正伊賀の乱は、忍者フィクションを考えるうえで重要な事件です。伊賀流忍者博物館の解説でも、織田勢による伊賀攻めは伊賀地域に壊滅的な打撃を与え、忍びが諸国へ離散する契機として説明されています。映画はその史実をそのまま講義するのではなく、伊賀という共同体の異様さと、そこに生きる人間の感情を娯楽映画として組み立てています。
忍者研究では、忍びを単なる超人ではなく、地域社会や軍事情報、潜入・攪乱の技術に根ざした存在として捉える視点が重視されています。その意味で本作の伊賀衆は面白い。彼らは正義の集団ではありません。金で動き、仲間を利用し、戦の中で生き延びる。そこにはロマンだけではない、忍びの生存戦略の影があります。
一方で、映画としての見せ方は非常にポップです。無門のアクション、夫婦のやりとり、伊賀衆の奇妙な軽さ、そして戦場の重さがテンポよく切り替わる。史実ベースの重厚な時代劇が苦手な人でも入りやすく、忍者映画としてのサービス精神があります。
Ninjack的には、『忍びの国』は“忍者を好きになりたい人”にも、“忍者像を少し疑って見たい人”にもすすめたい映画です。かっこいい忍者アクションを楽しめる一方で、伊賀という共同体の怖さも残る。見終わったあとに「忍者って何者だったのか」と調べたくなる、良い意味で入口になる一本です。










