忍者好きなら『甲賀忍法帖』は絶対に外せない!#
忍者が好きなら、山田風太郎氏の『甲賀忍法帖』はぜひ読んでほしい一冊。1959年に光文社から単行本化された忍者小説で、山田風太郎氏の「忍法帖」シリーズの出発点になった作品です。
この作品の何がすごいかというと、とにかく忍者同士の戦いが熱い! 甲賀と伊賀、それぞれ十人ずつの忍者が、徳川家の後継者争いに巻き込まれて命を懸けて戦います。
しかも登場する忍者たちは、ただ隠れるだけの忍者ではありません。毒・変身・瞳術・異常な肉体・再生能力など、とんでもない忍法を持った猛者ばかりです。誰と誰が戦うのか。どの忍法がどの忍法に勝つのか。相性ひとつで勝敗がひっくり返るので、ページをめくる手が止まらないこと請け合いです!
今の漫画やアニメでおなじみの「一人ひとつの特殊能力」「能力の相性で決まるバトル」「チーム対チームの死闘」は、『甲賀忍法帖』の時点ですでにかなり完成されています。山田風太郎氏の忍法帖が「集団対集団のバトルトーナメント」形式に大きな影響を与えたとよく言われているのです。忍者バトル作品が好きな人なら、「これ、あの作品の原点っぽい!」と感じる場面がきっとあります。
でも、ただのバトル小説じゃない!#
『甲賀忍法帖』のすごいところは、忍法バトルの面白さだけではありません。むしろ、読んだあとにじわっと残るのは、忍者たちの悲しさです。
彼らは強い。めちゃくちゃ強い。けれど、その戦いは自分たちの意思で始めたものではありません。徳川家の後継者争いという、上に立つ者たちの都合によって殺し合わされます。
大谷慎一郎氏の論文「名前はいかに抹消されるか:山田風太郎『甲賀忍法帖』論」でも、この作品では忍者たちの名前や身体が強く描かれる一方で、彼らが権力の仕組みの中で消費されていく点が論じられています。
つまり『甲賀忍法帖』は、かっこいい忍者たちが暴れ回る作品でありながら、「強くても歴史の主役にはなれない者たち」の物語でもあるのです。ここがたまらなく切ないのです!
忍者イメージを変えた作品でもある!#
実際の忍者は、情報収集や潜入、かく乱などを担った存在でした。吉丸雄哉氏の『忍者とは何か:忍法・手裏剣・黒装束』でも、現代人が思い浮かべる「黒装束で超人的な力を持つ忍者」は、文学や演劇、映画、漫画によって作られてきたイメージだと説明されています。
その意味で『甲賀忍法帖』は、フィクションの忍者像を大きく押し広げた作品です。忍者を「こっそり忍び込む人」から、「唯一無二の忍法を持つ異能の戦士」へと進化させました。
この流れは、後の漫画やアニメにもつながっていきます。せがわまさき氏による漫画『バジリスク~甲賀忍法帖~』は、2004年に第28回講談社漫画賞一般部門を受賞しました。2005年にはアニメ化され、同年には映画『SHINOBI』としても実写化されています。
小説として生まれた忍者バトルが、漫画、アニメ、映画へと受け継がれていったわけです。忍者作品史の重要ポイントといっても過言ではありません。
忍者好きにおすすめしたい理由#
『甲賀忍法帖』には、忍者好きがワクワクする要素がぎっしり詰まっています。
甲賀対伊賀
10人vs10人
一人ひとり違う特殊能力忍法
奇襲、だまし討ち、相性勝負
愛し合う者同士が敵になる悲恋
そして、歴史の裏側で消えていく忍者たちの哀しみ
ただ派手なだけではなく、読後にしっかり余韻が残るのがこの作品の強さです。
谷口基氏の『戦後変格派・山田風太郎』でも、山田風太郎氏の忍法帖は、戦争や敗戦の記憶とも関わる作品群として読まれています。忍者たちの戦いには、単なる娯楽を超えた重みがあります。
忍者が好きなら、『甲賀忍法帖』は一度は通っておきたい作品。現代の忍者もの、能力バトル、チーム戦の面白さをたどっていくと、この作品に行き着きます。
忍者のかっこよさ、怖さ、悲しさ、そして物語としての強さ。全てが入っています!










