「そろそろ本当の忍者の話をしよう」は現代と過去の忍者を映すドキュメンタリーだ

そろそろ本当の忍者の話をしましょうか。

そんな本が出版されました。

帯にある「忍者は手裏剣を使わなかった」というやや挑発的なキャッチコピーが目を引いてしまいますが、この本は忍者研究の第一人者・山田雄司先生が監修する国際忍者学会推薦の書籍なのであります。

一足先に拝読させていただいたのですが、なんとも良くまとめられた素晴らしい忍者本でしたので、僭越ながら書評をば。

最新の忍者研究が余すことなく取り入れられた名著

これまでの忍者に関する解説をした本の多くは、大体が伊賀と甲賀の忍びの歴史と忍術が中心のものでした。

伊賀甲賀以外の地域の忍者に関しては、事実の裏付けがない伝説や空想の忍者について記述される場合がほとんどであったと思います。

手裏剣や吹き矢、◯◯隠れの術などなど・・・そんな解説が多かったのではないでしょうか。

しかし、この「そろそろ本当の忍者の話をしよう」(以下省略して「そろ忍」と呼びます)は、手裏剣や忍術、架空の忍者のお話は一切出てきません

そして伊賀・甲賀だけでなく全国各地で最近ニュースになって発見された忍者達が網羅されているのです。

第一章:近年明らかになった忍者の史実
・鈎の陣
・忍者が生まれる地
・伊賀惣国一揆
・単郭方形四方土塁
・渡辺俊経家文書
・田原安右衛門という細作
・平成28年に忍者屋敷発見

・忍者の子孫と大名

・忍者と修験道

第二章:忍者の存在と活躍
・甲賀郡中惣
・天正伊賀の乱
・伊賀衆と甲賀衆の野寄合の地
・戦国武将と忍者
・家康の命を救った城
・甲賀武士の家康逃避作戦

第三章:江戸時代の忍者
・弘前藩国境の警備と修験
・弘前藩早道の者
・江戸諸藩の忍者
・佐賀藩
・佐賀藩・蓮池藩

・江戸青山甲賀町屋敷図
・江戸期の家系図に残る先祖由来書

第四章:現代における忍者と忍者研究
・現代の忍者川上仁一氏インタビュー
・狼煙の実験
・兵糧丸を家庭で作ってみる
・薬学と修験道

第五章:忍者旅に出よう!
・全国の忍者史跡、忍者施設

そろそろ本当の忍者の話をしよう

上記は「そろ忍」の目次ですが、太字の部分が近年になって忍者研究が進み新たにわかってきた伊賀甲賀以外の各地の忍者における実態。

そのほかにも、忍者と修験道についてかなり深く掘り下げた内容や、伊賀越えでなく甲賀越えだったのではないかという新説など普通の忍者本では掘り下げないような内容が随所に散りばめられています。

みなさんがイメージする忍者を思い浮かべながら読めば、初めて聞くような真実が次々と出てくることでしょう。

この「そろ忍」を読めば、忍者についてこれまでとはまた違った視点や認識を持つことができる名著なのではないかと思います。

現代と過去の忍者の姿を映し出すドキュメンタリー本

そして「そろ忍」の特徴は、なんといっても綺麗な写真がふんだんに使われていて非常にイメージが湧きやすいこと。

忍者の末裔として現在に生きる人々や、忍者関連の史跡、実験結果の様子に至るまで、ビジュアルが大変充実しております。

中身が非常に濃い雑誌を読んでいるような、そんな感覚でしょうか。

貴重な古文書の写真がたくさん載っているので、コアな忍者ファンにはなかなかたまらない仕上がりです。

過去に忍びの者が活躍した地の写真が映し出され、その次代から現代に繋がる古文書や血を受け継ぐ人々の姿が映し出されている「そろ忍」。

そこに虚像の忍者の姿は何一つとして描かれず、真実としてわかっているもののみだけが映し出されています。

この本を読み終えた時、「そろ忍」は過去と現代の忍びの者の真実だけを切り取ったドキュメンタリーのような本ではないかと感じました

何かこれまでの忍者本とは違った新鮮な気持ちにさせてくれる「そろ忍」、大変オススメでございます。

驚くべきは著者の編集力とスピード

監修は山田雄司先生ですが、この本の執筆・撮影・編集をメインでご担当されていたのが、株式会社ギャンビットの佐藤強志さん。

実は今年2月にあった国際忍者学会設立総会で初めてお会いして、なぜかお昼ご飯をご一緒させていただいたのですが、そのとき「忍者のことはまだあまりよく知らないのですが、これから忍者の本を作ろうと思っているんです」とおっしゃっていました。

それから半年、こんなに素敵な本がもう出版されるとは…!

相当な量の調べ物をして全国各地を回って、うまいこと編集しないことにはこんなにいい感じにはまとめられません。

伊賀・甲賀・佐賀・福井・群馬・栃木・長野・山梨・京都などなど多くの忍者スポットも紹介しており、圧倒的なスピードと知力で取材や編集をされたのだろうな、ととにかくそこに編集忍としては嫉妬してしまうくらいに驚いてしまいました。

また次の忍者本を企画しているとかしていないとか・・・今後に期待ですね!

ちなみに「そろ忍」の本のカバーを外すと中に面白い仕掛けがあるので、買われた方は見てみて下さいね!

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