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【Nin-terview #009(2/2)】中野学校情報戦士たちの挽歌 著者「蒲生猛」にインタビュー!

【Nin-terview #009(2/2)】中野学校情報戦士たちの挽歌 著者「蒲生猛」にインタビュー!




中野学校情報戦士たちの挽歌の著者「蒲生猛」のインタビュー第2巻!

中野学校情報戦士たちの挽歌-真田忍者の系譜-の作者・蒲生猛さんのインタビュー。

忍者の位置付けを情報ネットワークの観点から紐解いているうちに、忍者の悲しい役割に感情移入するようになりました。

蒲生猛さんが描く、彼らの想いとは一体どのようなものでしょうか。

すべてのNINJAをJackするNinjack.jpがお届けする忍者深掘りインタビュー第9弾その2です。

その1はこちら

忍者の運命を紡ぐ陸軍中野学校の情報戦士

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忍者がどんな想いで職務を全うしたのかを描きたくなって「中野学校情報戦士たちの挽歌」が生まれたわけですね。

蒲生猛 はい、忍者たちが何を支えに戦ったのか、彼らの内面心理を彼らの側に立って解明したいと思う気持ちが強くなりました。でないと「歴史上に忍者がいた」というだけで終わってしまう。調べる中で自分自身が忍者に感情移入すると、彼らに共感し、仮面をかぶることでしか戦えなかった彼らの悲しみがひしひしと伝わってきます。報われない戦いに自分の名前さえも名乗ることもできず身を投じた自己犠牲の生き方に心を打たれたのです。これを表そうとすると論文の域を出てしまうので、小説という形で執筆したのが『中野学校情報戦士たちの挽歌』です。

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小説で描かれる忍者はだいたい「掟だから守る」っていう冷徹な一面ばかりで、忍者だって心のある人間ですから本当はそうじゃなかったと思うんですよね。その意味で内面心理を別アプローチから書いていただいた本作は大変興味深かったです。
陸軍中野学校を題材にし、さらに設立までをメインにした理由はどこにあるのでしょうか?

蒲生猛 情報に関する通史を描こうとしたときに、昭和の時代はどうしても戦争の時代ですから情報戦について触れなければなりません。教育科目に忍術取り入れていた陸軍中野学校の情報戦士たちは、忍者としての想いや苦悩など「忍者の系譜」を紡ぐ者たちであったでしょう。その意味で陸軍中野学校を忍者の日本史として描きたかったのです。また、軍人の学校でありながらも自由で自律性を重視した学校であり、このあたりは自律性があった戦国忍者との共通点が多くあると思っています。
陸軍中野学校は、設立までと設立初期までが最も先進的で自律的な情報戦士を育成していました。中野学校も戦争が本格化すると情報戦士というよりはゲリラ戦士を輩出する方針へと変わっていき、自由度も設立当初よりは制限されていきましたので、学校の設立までを舞台とした方が彼らの内面心理をより的確に描けるだろうと考えました。

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忍者をはじめとした情報戦士たちはどんな感情を抱いていたのでしょうか。

蒲生猛 名乗ることができなくても、情報戦・謀略戦のプロフェッショナルとしての誇りは持っていただろうと思います。そして何よりも義に生きようとしていたのではないでしょうか。自分の利害をかえりみず、他国の民衆に尽くそうとしていたのではないかと。でないとここまでリスクのある仕事はできないと思います。そのような感情描写が文献としてどこかに残っているわけではありませんが、本作でも出てくる中野学校の設立メンバーである虎岩のモデル・岩畔中佐は、インド独立工作のために現地民と戦いを共にして戦争が終わったあともその中核メンバーとよく交流をしていました。危険な工作の先導を相手のためを想い、義を持って尽くした結果、相手方の多大なる信頼を勝ち得たのだと思うのです。

優秀なインテリジェンスに必要な「誠の精神」

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まさに陸軍中野学校の教え「謀略は誠なり」ですね。

蒲生猛 そもそも謀略というのは、敵を騙して戦争に勝つための手段です。金を使って敵国人をスパイに仕立て上げ、情報を盗ませるなどの汚い手段を使うのが一般的だと思います。しかしこのような汚い手段では1人や2人は動かせても、多くの人間や組織を動かすことには限界があります。人の心を動かすには、やはり誠の心がなければなりません。イギリスのMI5が陸軍中野学校に目をつけたのも、この日本の情報戦士たちの「謀略は誠なり」の精神がイギリス軍に属していたインド兵たちをどんどん日本側に寝返らせた事実でした。中野学校の生徒たちは誠の精神を持った人が多かったのです。

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情報戦士の喜びや幸せはどこにあるのでしょうか?

蒲生猛 彼らが多大なリスクを背負ってまでこれらの仕事を行う喜びは、世のため人のためになっているというある種の義侠心なのではないでしょうか。東北や熊本の震災に際しても、多くの若者たちがボランティアで被災者の人たちの支援活動に献身的に従事していました。その若者たちはほとんど自らの支援活動については語っていません。私はこの義に生きる姿に感動しましたが、中野学校の情報戦士たちも、時代や立場は違っても同じ心情だったものと思っています。戦国忍者はまた少し違った感情だったかもしれませんが。

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なるほど、忍術書に書かれる「正心」や「勇名もなし」と似たものがありますね。忍者はかなり崇高な理念を持っていたのですね。そんなアツイ情報戦士たちの義が描かれる本書ですが、お勧めどころがあれば教えてください!

蒲生猛 生きづらい制約の多い「戦争と革命の時代」に仮面をかぶって精一杯戦った戦士たちの生き方です。見えない戦争を懸命に戦った戦士たちの歴史劇として読んでいただけると嬉しいです。また、真田忍者の手記も戦国の情報戦士である忍者がどのような想いで任務を果たしていたのか、想いを馳せながら読んでみていただければ幸いです。その他、主人公の責任の取り方や「謀略は誠なり」の実践がもたらした結果など、最終章は感動したという声もいただいています。

現代や未来の忍者・情報戦士とは?

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忍者や中野学校生徒をはじめとした情報戦士の精神は、現代でも活かせるのでしょうか?

蒲生猛 私が会社員時代に営業や事業を長年やってきた経験からも、競合企業との競争に勝つことやビジネスとして成功するには、やはり情報戦を抑えることだと思っています。営業に限らず様々な職種でも言えますが、現代の競争に勝つために必要なことは「相手が望んでいるものが何なのかに先に辿りつくこと」です。一般のユーザーや法人顧客のキーパーソンやトップが何を求めているのか競合相手よりもいち早く掴むことが重要です。そのために大事なコトは「誠意」。自分たちが儲かるためにどうしたらいいかでなくて、どうしたら相手を最大限に満足させられるかを精神誠意尽くすことが、現代のビジネスにおける競争社会を勝ち抜く秘訣です。

日本の会社の組織はタテマエとホンネを使い分けています。そういう意味では、日本の多くのビジネスパーソンは、タテマエという仮面をかぶります。タテマエの仮面をかぶらなければ仕事ができない意味では、その多くの人が情報戦士にならざるをえません。そして専門分野を持ったプロフェッショナルとなることも重要です。これらの仮面を持つことや専門性・誠意の重要であることは、優れた忍者や情報戦士のあるべき姿と重なっていますね。誤解をおそれずに言えば、現代の日本のビジネスパーソンは優れた情報戦士を目指すべきでしょう。

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忍者や情報戦士の生き方は現代の僕らのロールモデルになりうるんですね!頑張ります!ちなみに未来のネットワークはどうなっていくのでしょうか?その時に情報戦士は必要なのでしょうか。

蒲生猛 未来のネットワークはさらに高速に、あらやうるデータと膨大な量の情報が行き交います。さらに2045年には人工知能が人間より賢くなると言われています。その結果、恐怖の監視社会が完成し、その頂点に立つ独裁者は人間でなく人工知能であるかもしれません。そうした事態を回避するために、長い歴史を持つ優れた忍者の知恵を活かし、複数の分野でプロフェッショナルになりうる情報戦士が必要とされています。

蒲生猛にとっての「忍者」

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蒲生先生にとって忍者とは何ですか?

蒲生猛 私のように「二足のわらじ」を履いて生きてきた人間にとって、忍者は身近な存在であり、汲めども尽きぬ魅力的な存在です。さらに言えばミステリアスな存在であり、私も含め多くの人々の変身願望を満たしてくれるクールな存在ともいえるでしょう。
私の教えているIT専門学校はアジアの学生が多いのですが、大部分の学生は忍者を知っています。アニメの影響が大きいのかもしれません。伊賀上野を訪れた際にも、町中を忍者の格好をした欧米人が集団で歩いていました。私の推測の域を出ませんが、欧米人に忍者が人気があるのはクールでミステリアスな部分だけでなく、忍者の持つ合理性やインテリジェンスに魅力を感じているのではないでしょうか。忍者のビジネスは1兆円産業にもなりうると予測されていますが、日本が誇る忍者を若者中心に世界に発信していっていただきたいです。

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最後にNinjackの読者にひとことお願い致します!

蒲生猛 『中野学校情報戦士たちの挽歌』は発売されて1ヶ月なので読者層の全容はわかりませんが、戦中派の父を持つ段階の世代が多く、好意的な感想をいただいています。団塊の世代や40-50歳の人たちにも多く読んでいただければと思いますが、これからは特に若い世代にも読んでもらいたいです。そして3人の中野学校創設者、中野学校情報戦士たちの生き方を知ってもらえれば、何か得るものがあるかと思います。

編集後記

今回は情報についてのプロフェッショナルの先生から見る忍者像、そして忍者を参考にした昭和の情報戦士たちの実態などについてお話をお伺いしました。

忍者がどうしてその時代に必要だったかを理解する上で、漫画や小説だけでなく社会構造から見ていくとまた違った忍者像が見えてきますね。

蒲生先生は大変クレバーな方で、ひとつひとつの見解が大変勉強になるお話でした。

今後江戸時代など他の時代の研究もされると思いますので、またぜひともお話をお伺いしてみたいと思います。

忍者や情報戦士たちのあり方を現代にも活かしながら、未来を生き抜くためにどうしたらいいか考えていきたいですね!

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