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【Nin-Talk】「忍者だけど、OLやってます」作者・橘もも&現役忍者・習志野青龍窟のスペシャル対談(1/2)

【Nin-Talk】「忍者だけど、OLやってます」作者・橘もも&現役忍者・習志野青龍窟のスペシャル対談(1/2)

忍者OL作者「橘もも」 × 武蔵一族忍者「習志野青龍窟」の対談が実現!

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忍者なのにOLをしてる主人公の物語を書いた小説「忍者だけど、OLやってます」(以降「忍者OL」)の第2作目が発売中!

というのはの記事で紹介しました。

なんとその後、忍者OLの作者である橘もも先生と、2作目「オフィス忍者合戦」を監修した現役忍者習志野青龍窟さんのスペシャル対談インタビューが実現しました!

作品に込められた思いや執筆裏話、そして端々に隠される忍者描写の意図などをお伺いしています。

記事の最後にはプレゼントも用意しておりますので、ぜひともお楽しみにご覧ください!

momo4橘もも
小説家。中学3年生の時に書いた『翼をください』が、講談社文芸図書第四出版部主催の「第7回ティーンズハート大賞」の佳作に入選し、高校在学中に同作で小説家デビュー。執筆を続けながら、大学卒業後に『ダ・ヴィンチ』編集部にて雑誌や書籍の編集者として勤務。現在はフリーライター・編集業(立花もも名義)と作家業(橘もも名義)を兼業。小説のほかにも、映画やゲーム作品のノベライズや、絵本や海外映画ノベライズ作品の翻訳なども手掛けている。

習志野青龍窟
江戸隠密武蔵一族の武芸忍組頭。幼少より格闘技や武術を習っていたところ、古武術や忍術のおもしろさに目覚め、現在は忍者としてショーや体験インストラクター、メディア出演などで現役忍者として活躍中。現在は、武蔵一族道場にて訪日外国人向けの忍者・侍体験ツアーにて古来の日本文化の紹介を積極的に行っている。ちなみにスーパービーダマンをこよなく愛しており、日本で唯一の「ビー魂」を持ち合わせた忍者である。

「忍者OL」誕生秘話

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Ninjack編集忍

本日はよろしくお願いいたします!橘先生、まずはそもそもなぜ1作目の忍者OLを書くことになったのかを教えて下さい!

もも 緊張しますね(笑)。よろしくお願いいたします。きっかけは、ただの思いつきでした。
以前、海外向けに小説や漫画を紹介するウェブサイトの制作に関わっていたのですが、あるとき、忍者モノの特集をすることになったんです。ただ、メンバーが40〜50代の男性ばかりで、私一人が20代の女性だったため、「若者向けや女性向けの忍者の本を探してこい」と指示が降りました。山田風太郎作品や『忍者ハットリくん』などの知っている作品はすべて奪われて(笑)、思い当たったのは『NARUTO』だけ。かろうじて『てるてる×少年』という少女漫画が、現代の高校が舞台で忍者が出てきたと思い出しましたが、それ以外にはさっぱり見つけられませんでした。
そのとき気づいたのが、忍者モノには、白土三平作品や『あずみ』のような歴史モノや、『さすがの猿飛』のようなギャグ・コメディに寄せた作品が多いということ。なので、もっと女性向けに、現代を生きる忍者の末裔がOLをやってる作品とかあったらおもしろいんじゃないかなーって思ったんです。……と、軽い気持ちで担当編集者に漏らしたところ、「それだ!」と食いつかれ、半年後に創刊される新しい文庫レーベルで執筆する事が決まってしまいまして。忍者の事なんてまともに知らないし、調べるだけでも時間がかかるのにそんな短期間で無茶だよと、打ち合わせでも他の題材にしないか何度か差し込んでみたのですがダメで・・・不慣れなりに現代忍者モノを書くことになりました。

Do you know REAL NINJA Culture in Wonderland Japanese当時の海外向けサイト。トップ画像の忍者の1人は橘先生と思われる…

Ninjack編集忍

半年でゼロから忍者のことを書くなんてすごいですね…

もも とにかく時間がなかったので(笑)、くだんのウェブサイトでご一緒した忍者好きのおじさま達に、プロット段階から協力してもらうことにしました。「忍者は我を殺して耐え忍ぶ孤高の存在なのだから、惣真は絶対に情に流させるな!」などと諸々アドバイスをいただきましたね。忍者に親しんでこなかった私にも、忍者好きの方々が並々ならぬ想いを抱いていることだけはわかっていたので、惣真には、「忍者かくあるべし」のイメージは崩させないように気をつけています。
その他にもいくつか資料を読みましたが、なかなか現代で使える忍術がなくて困りました。今は猫の首を持ち歩く「猫の目時計」なんてなくても時間はわかるし、兵糧食をつくらなくてもカロリーメイトを持ち歩けばいいだけですし(笑)。いわゆる忍者らしい技はどれも、現代においては「わざわざそんなことしなくても……」というものが多いんですよね。

「本当の忍者」を求めて忍者道場へ

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もも 忍者OLでは「本当にいるかもしれない」と思ってもらいたかったので、現実で絶対にありえないことは書きたくありませんでした。資料を調べながら一番感じたのが、忍者というのは諜報活動を行うスパイのようなものなんだ、ということ。だから、現代に忍者が息づいているとしたら、きっと産業スパイとして暗躍する人が多いだろうと思ったのですが、結果として忍者感が薄くなってしまって。読者からも「もっと忍者っぽい内容かと思ったのに」という反応が多く、しまったなあと思ったんです。ただのスパイ小説になったら意味がないし、フィクションなのだからもっと遊べばよかったと。でも、それができなかったのは、私が忍者のうわっつらしか見ていなかったから。なので、第2巻の執筆が決まったとき、「もっと忍者のことをよく知らなければ」と切に感じ、都内にも忍術道場みたいなものがないだろうかと検索して見つけたのが、この武蔵一族でした。最初はちょっと怪しいかもと不安でしたが、取材を申し込んだところご快諾いただけて。その時代表のバネッサさんと習志野さんにお会いしました。

習志野 まぁ確かにうちは怪しいですよね(笑)

もも すみません(笑)。でもお話を聞いてみると、目からウロコの事ばかりで感動してしまったんです。道場で棒手裏剣の体験などもさせていただいたらかなり難しい。身のこなしかたを実践で教えていただいたら、今まで知識だけだったことが全部腑に落ちました。気配の察し方などを聞いていても「本物の忍者の一族なんだな」と感じました。特に習志野さんには、指がぐにゃっと曲がったり、簡単に関節が外れたりするのに驚かされました!

Ninjack編集忍

え、どういうことですか?

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Ninjack編集忍

これは…忍者じゃなきゃできませんね…

習志野 忍者は関節を外して縄を抜けたりしますよね。関節を柔らかくしておかないとダメですよ。

「忍者とは生き方」と気づいた第2巻

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Ninjack編集忍

1巻では蛍火の術がでてきましたよね。

もも 実をいうと、書くべきではなかったかもと思っています。わかりやすく忍者っぽいので入れてみたのですが、安易だったなあと。忍者らしさって、「●●の術」とかそういうものにあるわけじゃないと思うんですよね。なので、2巻では書きませんでした。

習志野 術に名前をつけるというのは後世の人がつけたものであることが多いです。ある術にやられた人が何人もいて、やられた人が何をしてやられたのかの法則に気づき、その法則を総称して術名をつけて対策できるようにする。忍者だって昭和の頃につけられた名前で、術を使って情報操作などをする者達を総称して忍者と呼ぼうとなったわけですから。武術も一緒で、昔は技の名前なんてなかったケースが多かったと思われます。「こう来た時にはこうする」と師匠に教わった弟子が、記憶として体系化するために名前をつけるものだったのではないでしょうか。よくアニメなどでみる「なんとかの術!」と唱えてボンと消えるのはありえない話でして、やったことの結果として術に名前がついたと考えるのが妥当だと思います。そこに気付かれて2巻で使わなかったのは、橘先生はさすがですね!物事を見抜いていらっしゃいます。

もも ありがとうございます(笑)。2巻を書く時に、ちょうど忍術書の『万川集海』の現代語訳が出版されたので読んでみたんです。それまでは要約された資料しか読んだことがなかったので、改めて発見がいろいろありました。特に心を打たれたのが、作中にも入れた知伯と趙盾の逸話。そのとき気づいたのが「忍術って生き方の事なんだな」ってことだったんです。もちろん技の繰り出し方や戦い方、武器についても書いてありますが、それこそ結果論であって、忍術書に繰り返し書かれているのは「心構え」や「どう生きていくのか」なんですよね。ストイックで自己の役割を自覚していて、大義のためには我心を殺す。忍者というのは、すごく大局を見ている人たちなんだと感じました。

習志野 大局を見ているというのはまさにそのとおりで、忍者の大切な要素のひとつに客観性というものがあります。客観的であるということは我を殺すということで、主観が入ってくると自分の視野でしか情報が入ってこなくなります。落ち着いた心を持っていないと、収集できる情報というのは狭まってくるんですよね。とはいえ忍者だって人間ですから、客観性を保つのがときには難しい時もあります。そうならないためにあるのが忍術修行なのです。修行法にもいろいろなものがありますが、変なモノを食べてみたり、滝に打たれてみたりと、普通の人が絶対にやらないようなことをやります。ツラいものですが、その後にちょっとツラいことがあってもその修行よりも低いレベルのものであれば心も乱されません。大局的に物事が見られるように、忍者は修行をして心と体を鍛えるのです。

第2巻の見所!「現役忍者」が読んでもおもしろい!

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Ninjack編集忍

習志野さんは「忍者OL」の2巻を実際に読んでみていかがでしたか?

習志野 帯に書いたそのままで恐縮なのですが「おもしろい」ですね。ストーリーの面白さをキープしつつも、忍者の精神や本当の術のあり方をうまくバランスとって差し込んでおり、忍者を知らない人でも、逆に忍者が好きな人でも楽しめる内容になっているなと感じています。忍者の考え方や生き方、術についての取材を受けて少し難しい話もさせていただいたのですが、それを非常にわかりやすく噛み砕いてストーリーの中に散りばめられていただき、そういった意味でも大変おもしろかったです。

もも 習志野さんに伺った気配の話は、2巻の冒頭から入れてしまいました(笑)。実際に忍術道場にもお邪魔したので、修行のシーンなどは大変参考になりましたね。

習志野 修行にはその人の置かれている状況に応じた修行があるので、ストーリーに沿った修行の内容をお伝えさせていただいてました。この作品の主人公は非常に葛藤しているキャラクターです。陽菜子はどっちつかずになっている、あるいは自分に足りないものを求めている。そんなときに行う修行を作中に描いていただいています。

もも 組手修行やオフィスでの忍術合戦などの描写は、一人では絶対に書けませんでした。1巻で課題として残っていた忍者要素を、本物の忍者の習志野さんにお話を伺って、私の中でも腑に落ちた上で書くことができたので「ちゃんと忍者小説が書けた」と手応えを感じています。本当は1巻のときからできていなくちゃいけなかったんですけど。

Ninjack編集忍

忍者要素以外にも恋愛やビジネスなど多くのテーマが入っていますが、今回特に読者に伝えたいテーマはあるのでしょうか?

もも 恋愛も仕事も忍者の掟もそうですけど、作中では陽菜子はずっと悩んで迷っています。それは私もしかりで、たぶん迷わない人なんていないでしょう。読者の方には陽菜子に共感ながら楽しく読んでほしいですが、習志野さんの言葉や忍術書から私自身がはっとさせられたことを盛り込んだので、何か参考になる部分があればいいなと思っています。

▼その2へ続く・・・

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