忍者が使う画期的な火器の夏期講習!

画期的な火器の夏期講習! というダジャレを言いたかっただけですが、企画展「The NINJA -忍者ってナンジャ!?-」では忍者が使った火器についても教えてくれます。

煙をあげて消える忍者や手榴弾のようなもので周囲を混沌に陥れる忍者など、忍者と火術は切っても切り離せません。果たして忍者はどのようにして火を巧みに操ったのでしょうか?

教鞭を振るってくださるのは三重大学社会連携研究センター特任教授・三重大学名誉教授の荒木利芳先生です。 サイエンスから忍者に切り込む、ワクワク忍術学講座のはじまりです!

※本記事は、7月16日(土)開催の忍者・忍術学講座①「忍者と火器」を取材、構成した内容となります。
※スライド内における火器のイラストは、全て「忍器・忍術・忍器大全(Gakken)」を参考にしています。

忍術秘伝書「万川集海」に見る火器

忍者の秘伝書「万川集海」には火器についてこのような記述があります。

[su_note note_color=”#e3daa9″]火器=忍術要道の根元
1. いかに堅固な城郭や陣営も放火消失させることができる
2. 昼夜にかかわらず味方に合図することができる
3. 風雨に消えない松明で味方の難を救うことができる[/su_note]

そう、忍者が使った火器には大きく3つの役割があったんですね。

万川集海に記載される火器の種類
1. 破壊用火器111種
2. 狼煙合図用火器13種
3. 松明用火器106種

鉄砲や火炎放射機系の「何かを壊すための火器」が多いのはなんとなく想像できますが、「周りを明るく照らす松明用の火器」が同じくらいの紹介数を割かれているのは意外ですよね。

忍者が戦うためだけではなく、闇夜での情報収集の任務のためにどれだけ重きを置いていたかが伺えますね。

火器に必要な火薬を作るには…?

火器を使うためには大量に火薬を生成する必要があります。忍者はよく薬の知識が豊富だったといわれますが、この火薬についても例外ではありません。

では忍者はどのようにして火薬を生成していったのでしょうか?

火薬の歴史から紐解いて行きたいと思います。

火薬は発祥は「不老不死」になりたい人!

この火薬って一体いつ発明されたのでしょうか?

時は遡り、場所も日本から離れた中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜220年)。そう、今流行りの漫画「キングダム」の舞台となっている時代ですね。

この時代、道教の思想に「大自然の山奥で厳しい修行に励むと不老不死の仙人になれる」と神仙思想なるものがありました。みんな山奥で厳しい修行をするのですが、ラクな方に行きたいのが人間の性なのか

「厳しい修行しなくても不老不死になれる霊薬を作ればいいらしい」

という噂が流れはじめるようになり、だんだんとみんなこの不老不死の薬を作る方向性へとシフトしていったようです。

最初は体に良さそうな薬草などを調合しまくっていたが、どうも不老不死になれない。そこでヒ素や水銀などの毒物を調合してみたりするようになりました。多分ですが、不老不死になろうとしたのに、毒物をもって死んでいった人たちがたくさんいたことでしょう…。

そうこうして試行錯誤を重ねるに重ね続けて唐の時代(西暦850年)に突入したところ、ついに硝石と硫黄と炭を調合し始めた不老不死ファンの人が出始めました。その男は不老不死になろうとしたのに、いきなり爆発したものですから大火傷を負ったといいます…。

このことから当時の道教の教科書には「硝石と硫黄と炭を混ぜてはいけません」と書かれているのだとか。

これが火薬のはじまりで、この後これに武将たちが目をつけて軍事へと利用していくようになりました。

糞尿を制するものが火薬を制す!

火薬を構成する主な成分は、硝石 + 硫黄 + 炭 です。この中で特に重要となってくるのが「硝石(しょうせき)」であり75%と一番含有量が多いので、硝石をいかにGETするかが火薬づくりを抑えるポイントになってきます。

硝石とは、人や動物の糞尿から微生物の働きでつくられる硝酸カリウムという化学物質のこと。硝石は中国や東南アジアなどの乾燥地帯でしか採れないため、戦国時代においては日本では輸入するか自分たちでわざわざ作るしかありませんでした。

わざわざ硝石を作るために必要な原料は、包み隠さず言うと「うんち&おしっこ」です。現在の富山県にある五箇山では蚕の糞を利用して硝石を作り、年貢として収めていたようです。

大量の火薬を手に入れるには硝石が必要で、硝石を作るには大量の糞尿が必要…。そう、忍者が活躍した時代は糞尿を制する者が火薬を制する時代だったのでした!

208種類もの原料を使った忍者

忍者が使った火器には硝石が一番使われたのは間違いないのですが、それ以外にも狼の糞や漆、ミョウバンなど208種もの原料を作っております。これらを使用して実に233種類もの火器を製作しました。

この組み合わせの数、ハンパじゃありません。

この数にたどり着くまでに何千回・何万回と実験しては失敗して、一喜一憂しながら使える火器を開発していったのでしょう。忍者はダイナマイトを開発したノーベルとも肩を並べるほどの発明家集団でもあったのだと思われます。

忍者が使った火器を一挙紹介!

荒木先生が忍者が使った火器を一挙に紹介してくださいました。胸踊るさまざまな火器の実態に酔いしれましょう!

焙烙火矢

焙烙と呼ばれる陶器を使った手榴弾的なモノ。

埋め火

今でいう地雷のようなモノ。

鳥の子

名前は可愛いのに、大音量と煙がめっちゃ出る煙幕弾。逃げるために使ったと考えられます。

火槍・取火方

火槍は、火炎放射器と槍が合体した恐ろしい武器です。

飛火矢

矢に火をくっつけて放ち、刺さると爆発するという優れモノです。

これらの火器を忠実に再現してみる!

この火器講習で一番見ものだったのは、これらの火器を実際に実験したビデオ上映でした。

滋賀県内の柿木花火工業の協力を得て、焙烙火矢や鳥の子などを忍術書に基づいて実際に再現!すごくおもしろそうですよね。やりたくても免許ないとできないし。

全部は公開できませんが、いわゆる煙玉として使われた鳥の子だけ動画をアップします!

やはりすごい煙の量です。

こんなものいきなり投げつけられたら一瞬動転しますから、これで逃げることは可能だったでしょう。

こういった火器がその後火縄銃に改良されたりして、忍者は戦国時代を駆け抜けたのでした。

忍者は科学技術者集団だった

これらの火器は、今から500年も前に忍者たちが実際に開発したモノたちです。豊富な化学・科学の知識がなければここまでも多くの火器を開発することはできません。

そしてその技術をとっても文化をとっても、日本は当時の海外と比べてかなり高い水準を保っていたようです。

そんな日本の中で次々と新しい火器を開発し、世に恐れられた忍者たちの研究の集大成が忍術書には記されているのです。

忍者展の火器講習でいろいろと見えてきた忍者の真実。忍者はスパイだっただけではなく、そのもう一つの顔は次々とイノベーションを起こすエリート科学技術者集団の顔でした。科学忍者隊ガッチャマンもあながち間違った描写ではないんですね。

忍者さんはどこまで僕らの想像を超えてくるのでしょうか。今後も忍者の研究成果には目を離せませんね!

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