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「共謀罪」が成立するかも?
与党が今3月の可決を目指して進めている共謀罪(テロ等準備罪)の制定。
これは「まだ悪いことをしていなくても、犯罪の準備をしただけで罪になる」という法律のことです。
2020年の東京オリンピックに向けて、国際テロの陰謀を未然に防ぐために必要だという説明がされています。
国際テロに対する捜査協力をする国際条約を締結するために、国内でこんな内容の法律がないとダメなんだとか。
過去国会でも3回ほど提出して制定に至らなかったという、なかなか議論を呼ぶ法律となっています。
法案策定側は「共謀罪じゃなくてテロ等準備罪」と名称を変えて来ていますが、まぁ広い定義としてはいわゆる共謀罪なので、ここでは共謀罪として書いていこうと思います。
Ninjackは忍者メディアですから、別に現代の政治ジャーナリズムを担っているわけでもないのでその是非は特に論じません。
ですが、もしも共謀罪(テロ等準備罪)が成立した場合、いったい忍者にとってどのような影響があるのか?というのは興味津々ですし、その大半が忍者である読者の方々も気になりますよね!
き、気になりますよね…?
ということで、現在提出されている共謀罪の内容の簡単な説明と、それを忍者に当てはめたらどうなってしまうのかを検証したいと思います!
共謀罪の成立要件は?
日本の刑法の原則は「疑わしきは罰せず」の精神なので、まだ行動をしていないならば、殺人などの重い罪を除けば刑に処されることはありません。
今回の共謀罪は、その例外として「ある一定の人のある一定の行為における計画が、ある一定の段階まできたらとっつかまえよう!」っていう内容になっています。
具体的に共謀罪が成立するケースは以下のとおりです。
これに該当すれば、たとえまだ何も悪いことはしていなくても捕まってしまう可能性が出てくるんです。
果たして戦国忍者がまだこの現代に生きていた場合だと、どうなってしまうのでしょうか。
戦国忍者のよくある事例
上記の成立要件に当たるかどうかを検証する前に、まずは戦国忍者の任務についておさらいしてみましょう。
山田雄司先生の名著「忍者の歴史」の定義によると、以下の通り書いてあります。
戦国時代の忍びは、各地の大名に召し抱えられて、敵国への侵入、放火、破壊、夜討、待ち伏せ、情報収集などを行った…
伊賀、甲賀地方は…自治が発達し、一揆を形成して武装していた。そのため、ときには近隣諸国に傭兵として雇われ、堀を超えて城に侵入し、戦闘に加わったことが確認できる。
記載にもあるとおり、戦国の忍者は一揆を形成しており、忍者集団として徒党を組んでいたことは間違いありません。
甲賀でも甲賀郡中惣を構成したり、各地の忍者も単独プレーではなく複数名の忍者によって任務を行なっていました。
大名や依頼主からミッションを受け取ると、その忍者たちは作戦を立てて鉤縄を用意したり、手裏剣をこさえたりして、夜の任務に備えたのです。
そうして時が来れば、城に侵入し(住居侵入罪)、火をつけ(現住建造物等放火罪)、人を斬り(暴行罪・殺人罪)、何かを盗んで(窃盗罪)、依頼主の元へと必ず生きて戻って来ることになります。
それもこれもお仕事でやってることですし、戦国の世は異常事態な時代なので当然なのですが、平和な現代に当てはめると犯罪のオンパレードですね!
これらを実際にやっちゃったり、やろうとして失敗するとタイーホなんですが、今の法律であれば、一部を除いてこれらの行為を行おうと仲間の忍者と示し合わせて準備までしたけど戦が終わってやっぱりやめた、ってことになれば罪に問われることはありません。
でも、もしも室町幕府の組織の中にめちゃめちゃ有能な警察機能があったとしたら、そんな厄介な忍者達が実際に破壊活動を行う前に、この共謀罪を駆使してとっ捕まえてしまおう!と思ったことでしょう。
時代錯誤感がハンパないですが…そんな設定のもと、戦国忍者が共謀罪にあたるのか否かを検証してみたいと思います。
忍者は根こそぎ捕まる…
考えるにあたって、上記の忍者達の行動が1つ1つ成立要件に当てはまるのかを見ていきましょう。
忍者は「組織的犯罪集団」なのか
まずはそもそも忍者というのは組織的犯罪集団に該当するのかを明らかにする必要があります。
先述したとおり、まず一定の組織であることは間違いありません。
って忍者もいるかもしれませんが、1人の抜け忍さんはこの共謀罪については該当しないので安心してください。
では忍者は果たして「犯罪集団」なのでしょうか?
これについては現在の提出法案では、犯罪集団の定義が曖昧なため、どこまでが犯罪集団でどこまでが違うのかがいかようにも解釈できてしまう、と問題を指摘する声が多い状態です。
ただ、現在の倫理観や枠組みで言ってしまうと、忍者は戦国時代においては一種の犯罪集団として周りからも見られていたと思います。
それこそアウトローな存在として。
江戸時代の忍術伝書では「正心大事やで!」って言ってますが、それをを長ページに渡って唱えたのは、紛れもなく忍者という存在の社会的信用が低かったために正当化する必要があったからでしょう。
その意味では、やはりアウトローな犯罪者集団としての位置付けだったのだと勝手に思っています。
そこがカッコいいんですけどね!
忍者が企むことは対象犯罪に含まれるか
現在対象となり得る条項は、以下の5分類です。
組織的な殺人や放火など「テロの実行」(110)
覚醒剤の輸出入や譲渡など「薬物」(29)
人身売買や強制労働など「人身に関する搾取」(28)
組織的な詐欺や通貨偽造など「その他資金源」(101)
偽証や逃走援助など「司法妨害」(9)
忍者の仕事は基本的にテロですし、あほう薬を作るために麻の栽培などもしていました。
詐欺なんてお手の物ですし、嘘の証言なんて平気でやります。
ということで、忍者が行うことは結構っていうかほぼパーフェクトに対象犯罪に当たるんだと思います!
戦国忍者さん、ちょっと危うくなってきましたね…
忍者はいつ捕まってしまうのか
共謀罪は先ほど確認した通り、まずは2人以上の者が対象犯罪を実施することについて合意することが必要です。
忍者は基本的に、事前にかなりシミュレーションをして任務に出かけたとされています。
この時点で明確に住居不法侵入をして、窃盗を行い、放火して、殺人まで犯そうとする具体的な合意をしてしまっています。
でも、ここまで綿密に計画を立てた後に
ってなったら、計画してただけなので共謀罪には該当しないことになります。
アウトになるのは、その計画を実行するための準備を行なった時点です。
と準備を始めたその瞬間!
と、その忍者は共謀罪が成立してしまうのです。
これまでは行動しないと捕まらなかったのに、準備しただけで捕まってしまいます。
これじゃあ戦国忍者は何にもできないですね!
みなさんは現代に生きる忍者ですから、きっと普通に忍んでいればまず問題はないと思います。
忍者の格好をして集まっているだけで「あいつら組織的犯罪集団じゃね?」って睨まれると、捜査の対象になっていろいろと身バレするのかもしれないので、大勢の忍者が外で会う際は気をつけたほうがいいかもしれませんね!
※法案の内容は、2017年3月1日現在の報道を元に執筆しています。
※こちらはあくまで忍者ネタですので、法律の解釈およびその効果について一切責任は負いませぬ。ご了承ください。