2018年6月17日に第11回となる「甲賀流忍者検定」が行われました。
開催告知の記事でも書かせていただいたように、僕も今回は上級の試験を受けたのですが、最近無事に合格の通知が!!!
上級試験は中級合格者しか受けられず、中級試験もなかなかの難題なため、過去に受けた人もほんの一握り。
過去問を手に入れるのも一苦労という有様でした。
忍者の予備校的機能を目指すNinjackとしては、今後上級を受けられる方に役立つ情報も発信していきたい・・・!
ということで、上級試験の試験内容や様子を事細かにレポートして参りたいと存じます!
※甲賀忍術研究会には問題掲載の許可をいただいております。
目録 - MOKUROKU -
上級は筆記・巡検・レポートが課される!
当日の受付会場は、滋賀県の甲南駅から徒歩15分ほどにある忍の里ぷらら。
上級と中級はこちらの綺麗なお姉様方3忍衆がお出迎えしてくださいました。
どうやら今回の上級受験者の人数は4名のみで、中級を合格せし選ばれし忍びの者達が集ったようです。
上級試験は一次試験(筆記)・史跡巡検・二次試験(レポート)から構成され、この全てを突破しなければならない難関試験となっております。
初級・中級までの筆記試験は四択の選択式問題で選択肢の中から選べばよいのですが、上級の一次試験はなんと記述式問題!
50問もの問題が出され、生半可な知識では絶対に回答できない上級ならではの知識が試される問題となっております。
Ninjackを読んでいれば高得点がとれたかも…な1次試験
第1次試験問題は問題1・問題2の大問が出題され、以下のような内容となっておりました。
ー、( ② )の下には、( ③ )の者なくては、かなはざる儀なり。大将いかほど( ④ )の上手なりとも、( ⑤ )と足場とをしらずば、いかでか謀などもなるべきぞや。其上番所目付用心のためには、( ③ )をこころがけたる人然るべし。されば、( ① )に、むかしより比道の上手ありて、其( ⑥ )に伝はり今に之あるといふ。然る間、国所の名を取りて、( ① )衆とて諸家中にあり。
第三、( ③ )に遣わすべき人の事
一、( ③ )に遣わすべき人をば、よくよく( ⑦ )あるべし。第一、( ⑧ )ある人。第二、( ⑨ )のよき人。第三、( ⑩ )のよき人なり。( ⑪ )なくては( ③ )はなりがたかるべし。但し其役人と定まり、常々比道の( ⑫ )ある人は他事には不才覚なりとも、吟味あるゆへに、 ただ人の( ⑪ )よきほどは之あるべきなり。されば前にいふごとく( ① )衆然るべきなり。
第五、( ③ )の人こしらへの事 付けたり案内を問ふ事
一、敵の法度のしなしな・備へ手くばり・あひことば・敵の大将・物頭の( ⑬ )をみしり・旗幕の紋・みちすじ・( ⑭ )・家居までも( ⑮ )などにして帰るべきなり。又あまりあなたこなたへ 、気をくばり過ぎては、覚もあしく結句専一の事などを、わするるものなり。光も( ⑯ )懐中あるべし。万事覚書のためなり。
第七、( ③ )火を持つ事
ー、( ③ )火を持つこと肝要なり。( ⑰ )を宿として敵地にては、( ⑱ )に近づき、火をもとむる事なりがたし。その上味方を待つ( ⑲ )などにも、( ⑳ )をたてることあり、されば火を持つ事専なり。
第九、水ある所を知る事
ー、水をたずぬるに心得あり。( ㉑ )の生ひたる所、白鴎(かもめ)・( ㉒ )などのちかづく 所、( ㉓ )険阻なる下には、ながれちかし。加様の所に目をつけ、尋ぬべきなり。
第十一、( ③ )習ひの事
ー、( ③ )をする人は、内々見をかるべき事などは、随分見とどけ( ㉔ )とどけ書きしるし 、取り合ひ半ばにも案内を知り、表裏を以て敵中にしのぶなり。又しらぬ国などへしのび入り、 大将の( ㉕ )をも書きしるし帰ることは、他国の( ③ )と常々にしたしみ、方々に近付き之ある故、其の人の書き置きたる( ⑮ )を取りて帰るなり。されば( ③ )と( ③ )の出あひて、 物語するに、巧者の入る事にて此れあり候なり。言葉の品をもって、味方のよわみにならぬやうにはなすべし。又敵の言葉に心を付けること、専一なり。(以上)
どうでしょう…結構難しいですよね。
そもそも「軍法侍用集」という書物すらほとんどの方は忍者関連の書であることすら知らないんではないかと思います。
過去は正忍記などから問題が出たケースがあるようですが、軍法侍用集は萬川集海にも結構引用されているものの、その存在は結構マニアックだったりします。
でも…これについては最近Ninjackにて解説特集をしていまして、たまたま勉強していたのでラッキーでした!
ただ記事に書いてなかった第七・九・十一はほぼ全滅でしたね…。
来年は軍法侍用集はさすがに出ないと思いますが、ちゃんと連載していれば満点だったはず…執筆がんばります!
続いての問題2は、甲賀忍者にまつわる歴史問題です。
永禄五年三月( ハ )神君は去年東条・西尾・永沢等の城々攻落されし其の勢に乗じて、今川方( イ )長介( ニ )が西郡( ホ )の城に有りけるを攻めらるべしとて、松井左近忠次を其大将に命ぜらる。忠次直ぐに打ち立ける所に、物頭三原三左衛門申しけるは「此城( へ )険阻に拠れば、( ト )にせば( チ )多く損すべし。幸御旗本( リ )衆所縁の者あり。其の縁に付て( リ )の徒を招き、場内へ( ヌ )を入置然るべし」と諌めければ、忠次尤もと同じ、( リ )より( ル )資家を始め、( ヌ )に慣れたる兵( ヲ )余人を招きて、この徒を所々に伏置て、三月十五日の夜、場内へ( ヌ )入らしむ。やがて城内( ワ )に火をかけ、( カ )は態と声にも立てず、隙間なく乗入て切て廻る。城中には( ヨ )のもの有と心得散々に敗走す。城の守将( ニ )は城の北の方護摩堂の方へ逃行所を、( タ )資定駆寄て突伏て( レ )を取。其子藤太郎長照・勝三郎長忠伴伯耆守資継がために生捕らる。( ハ )御出馬に及ばず、此城( ソ )ければ、松井左近が功を大いに称賛し給ひ、伴与七郎にも翌年に至り、感状を賜ふ。此の城をば久保佐渡守俊勝をして守らしむ。
今川( ツ )は西郡の落城を聞きて大いに怒り、( ネ )の人質を詳せんとすれども( ハ )の北方は今川の一門関口親永の( ナ )故さもなし難く日数を送る所、石川伯耆守数正是を聞きて、もし主君の若君( ラ )にて害に逢給ふ事あらんには、( ム )するもの一人もなきは、当家の恥辱なり、此事告る共主君許し給ふまじと思ひ、家に其趣を書置し、( ラ )に趣て若君に付添進らせたり。( ツ )は( イ )も親族なれば、其子両人( ネ )に生捕になりしと聞きて、大いに憂るよしなれば、関口が方まで北方若君二方と( イ )が子二人とを( ウ )んと申入れけるに、( ツ )悦び早速許諾しければ、伯耆守は岡崎へ帰り、其事を申上る。( ハ )も甚悦給へば、伯者守は( イ )兄弟をともなひ( ラ )へゆきて、今川方へ渡し、北方と若君を請取、供奉して( ネ )へ帰る。
( ネ )には君臣共に大に悦び数正が今度の功を感ぜずといふ事無く、比後は今川方とは弥(いよいよ)御手切となりければ、( ツ )大いに憤り、叔母聟関口形部少輔親永に( ヰ )らせけり。然るに( ネ )の御家人等は只今まで人質を( ラ )へ出し置もの多し。今川方小原肥前守鎮実三州吉田にて人質を預りけるが、此頃松平与次郎清善が今川へ出し置しを捨て、( ネ ) へ其妻を進らせたりと聞きて、大いに怒り兼て今川方へ出したる人質の女子、其外( ネ )方の人質11人、吉田の城外竜念寺口に於て串刺にしたりける。これを見る者小原が暴悪を爪弾して悪(にく)みける。
これは以前にも紹介させていただいた「鵜殿退治」の件ですね。
おそらくこの記事を読んでいれば半分以上は解答できたのではないかと思います。
が、自分もこれ書いたのが2年も前だったのでほとんど忘れてしまっていました…。
一番凹んだのは、鵜殿の「鵜」と駿府城の「駿」が書けなかったことでしょうか…
午後の巡検のとき車で送ってもらっていたときに、試験監督の人から「鵜殿の鵜がかけてなかったですね!」と言われて死にたくなりました(笑)
なお試験監督の方がおっしゃっていましたが、コツとしてはこういうときにも諦めずに解答がわからなくてもなにか書くこと。
1問が2点なので、それに近い答えがあればおまけの1点をつけてくれるようです。
50問×2点の100点満点ですが、果たして何点取れているのでしょうか…?
史跡を巡り解説を聞く巡検タイム
磯田道史先生の特別講演も終わり、初級・中級の方は結果発表。
初級・中級はその日のうちに採点がありますが、上級は後日レポート提出なので当日ではまだわかりません。
そのレポート課題に関わる現地を視察するため、午後は車でどこかへ連れて行かれます…
車の中で午前の筆記試験の解答と、上級のレポート問題、参考資料が手渡されました。
上級のレポート問題のお題は、以下のようななんともマニアックで心震えるような問題でした。
天正9年(1581)7月某日、貴方は甲賀望月氏一統を率いる柑子村の村嶋城主である。本日、甲賀郡内小佐治村佐治城主佐治為次の直々の訪問を受けた。「近く織田信長が伊賀を攻めることになったので、織田軍の一翼として参戦してほしい。ついては1ヶ月後を目途に、100人の兵を整えて織田軍からの連絡を待ってほしい。以上は安土の信長からの伝言である。」という。
さて貴方は、いかなる理由でいかなる返答をするか、その後いかなる準備ないしは対策を行うか。因みに望月一統はその時点で甲賀郡内数か所に一族の拠点を有すると共に、伊賀にも三ヶ所に親戚を有していたと仮定する。6月30 日ま でに A4用紙5枚以内で回答せよ。 (以上)
今回回答の要点:
・佐治氏への返答の内容とその理由(判断の根拠)
・準備ないしは対策(アクション)の内容とその理由
・その他
回答時に留意すべき点
今回の設問は実は仮定の問題であるが、回答に当たってはあくまで当時の望月氏の頭領としての判断を求めます。考慮すべき幾つもの困難の中で、上級忍者にふさわしい回答を期待する。
回答方法、採点方法
①A4 ×5枚以内。自筆でも、パソコンで書いてもよい。但し電子データでの送付は受け付けない。
②紙の回答書を添付の返信用封筒を用いて、6月30日必着で送付のこと。
③参考資料を引用することは認めるが、その資料を送付する必要はない。
④あくまで回答者自身の判断を求めている。発想は自由である。
⑤配点は一次試験100点、二次試験100 点の合計 200点で140 点以上を合格。
⑥二次試験で画期的な回答を得た場合は 5~20%のボーナス点を差上げることがある 以上
午前中の筆記試験の鵜殿の「鵜」がやっぱり書けていなかったことはすぐに忘れ、どんな風に解答しようかをずっと頭の中で考えていました。
そうこうしている内に目的地に着いたようです…!
ここは甲南町柑子村で、今回のレポート問題の題材にもなっている望月氏が当時治めていた地域だといいます。
そしてここが設問にも書いてあった望月村嶋城!
あの甲賀忍者の末裔・渡辺俊経さんの解説を聞きながら、民家の横を通り、実際に城跡を登っていって甲賀の里を眺めます。
そして尾根づたいにすぐ隣に存在したのが青木城!
歩きながら諸々解説をしてくださるのですが、村島城にいた望月・兄と青山城にいた望月・弟は大変仲が悪かったそう。
そして当の望月氏の父親は途中で甲賀内の別の村に行ってしまったとのことでした。
問題には一族の仲の良さについては書いていなかったですが、後々にこの現地巡検中の渡辺さんの解説が効いて来ると知るのは合格通知が来てからでした…。
青山城の頂上で再度試験問題の確認をして、放置プレイはなくちゃんと試験会場や駅まで送ってくださいました。
試験日が6月17日でレポートの提出期限は6月30日…ということは
ということで、帰りの車で渡辺さんに「なんとか次の土日もOKに…」とお願いしましたが、「実際に信長の使者から援軍要請が来た時にはもっと早く返答しなきゃならんですよね?駄目です!」とにこやかに一蹴されました。
土日でなんとか書き終えましたが、W杯日本代表のセネガル戦に間に合わせようともう必死でしたね…。
なんとか忍者検定レポート終わった…調べ物と回答作成で6時間位かな
回答考える時、会社で無理難題行ってくる上司からのお題を複数のステークホルダーとの利害関係考えながら、ちゃんと自分にも利益出るように計画とか戦略立てるPM業務やってるみたいな気分だった
せねがる戦始まる前に燃え尽きた
— 嵩丸 (@shinobi803) 2018年6月24日
本当に多方面からリスクやメリデメを整理しなくてはならないので、なかなか頭も気も使うレポートだったのですが6時間くらいで集中して解答しました。
他の人はどんな回答したのかすご〜く気になりますし、次回上級を受けるNinjack読者の方も気になると思いますので、今回は大変恥ずかしいのですが特別出血手裏剣大サービスで、僕の答案を公開したいと思います…!
これでA4用紙5枚分、図書館で伊賀市史なんかを参考にしながら解答いたしました。
返信用封筒に入れてポストに投函!
果たして合格しているのかどうか…結果を待ちます。
講評までしてくれる採点と嬉しい副賞!
数日後、なぜか「クール便」のお届け物があり、誰からだろうと思って中を開けてみたら、そこには合格証が!
なんとこれ「信楽焼」でできているというすごい代物であります…!
そして副賞にはたくさんの炭水化物たちが!!
クール便だった理由がわかりましたが、これは嬉しいお届け物ですね!
と思って賞味期限を見てみたら・・・
忍びたる者、眼の前のモノは瞬殺で始末せねばならぬということなのでしょう…おいしくいただきました!(もうしばらくモチはいいやw)
そして嬉しいことに試験やレポートに対する採点と講評が載っておりました。
軍法侍用集からの出題で、解答例のない中での高得点でした。忍者の代表的な流派、甲賀流と伊賀流を認識してもらう意図での出題でした。
<二次試験 得点と講評> 84点
織田信長が伊賀を攻め「天正伊賀の乱」の際に甲賀武士に課せられた役割に対して、甲賀武士望月一族の長としてどう対応すべきか」を問うている。甲賀郡中惣の一員として、また立場をより強固にするにはどうすべきかを問うている。
こうした判断基準に基づき、貴方の二次試験の講評は概ね下記のとおりです。
・政治社会情勢判断
【◎】伊賀武士の動向 織田信長の評価
【○】甲賀武士の動向
・望月氏の立ち位置
【◎】情報収集 伊賀との対戦
【○】一族団結の必要性
・方針決定のプロセス
【◎】同名中惣の動員 兵員の確保
【○】兵馬の食料確保
・伊賀の親戚対策
【◎】織田に対する秘密
【○】隠密行動 伊賀との戦い方
<総合得点>76.5点/100点
100点・100点を足して2で割った数字が総合得点となっているようでした。
100点満点時の総合得点は70点以上で合格なので、一次試験であと6問ほど誤答をしていたら不合格になるところでした…!
講評における採点の観点を見るに、自分の解答は織田や伊賀については結構いい線書いていたけど、甲賀忍者側の考察が少し足りなかったようですね。
甲賀市史など結構資料は調べたのですが、ほかの甲賀忍者達がどう動いたかわからなかったし、仲違いしている兄弟なんてほっとけ!って思っちゃったのがよくなかったようです…
兄弟仲違いの件は巡検で渡辺さんのお話を聞いていないと知ることもできないので、巡検も大事であるということがわかります。
受かるのに必要なのは日頃の忍者探求心かも・・・
ということで甲賀流忍者検定の上級の模様をかなり赤裸々にお届けして参りました。
正直、筆記試験については忍者検定の読み本だけでは全く太刀打ちできないと思います…。
忍者全般(特に甲賀・伊賀)について幅広く文献を読むなど、日頃の忍者探究心がモノを言うだろうな、と思いました。
そしてレポートに関しては、本当に自分がそのときの忍者になりきった気分で解答を考えることがポイントです。
敵・味方・家族・親族・兵糧・人員などあらゆる可能性を想定し、それに対する実現性とリスクを想定してしてしまくることこそが、リアリティにある解答につながっていくことでしょう。
甲賀流忍者検定の上級試験は最上級の忍者知識を試される試験だ、と思いました。
既に過去に僕なんかより早く合格している諸先輩方も複数名いらっしゃいますが、相当な忍者好きじゃないと合格できていないだと思います。
でもこれは忍者としての知識を試すのにチャレンジするだけの価値がある、とっても楽しい試験。
中級受かった方は、ぜひとも来年チャレンジしてみてくださいね!
晴れてこれで甲賀の上級忍者となりましたので、今後Ninjackでも試験に出るか出ないかはわからない解説記事などを充実させていただきたいと思います。