忍者は”記憶”より”記録”が大事!〜しのびに心を付けべき事〜|軍法侍用集vol.05

江戸時代にまとめられた「軍法侍用集」の忍者関連記述解説シリーズ。

前回は軍法侍用集の記述から、「どんな心持ちで忍び込むか」について解説してみました。

「怪我したって死んだっていいから主君のために仕事をやり遂げるぞ!」という思いで忍び込もうと思います!が…あらゆることに準備もしておけってあるけど、任務中にどんなことを気をつければいいのかなぁ?

ハートは熱くもっていたとしても、勢いだけですぐに見つかっては飛んで火に入る夏の虫。

しっかりかっちり準備をして、完璧に任務をこなしたいところですよね。

忍者はあらゆる絵がかけないとダメ!

忍者が忍び込むとき、一体どんなことに気をつければ良いのか軍法侍用集は教えてくれます。

忍者の本分は情報を収集することですが、見てみるとそのことにぴったりな心構えなのです。

第五、しのびに心を付けべき事

一、敵の法度のしなじな、備へ手くばり、あひことば、敵の大将、物頭の面をみしり、旗幕の紋、みちすぢ、山河、家居までも絵図などにして帰るべきなり。又、あなたこなたへ気をくばり過ぎては、覚えもあしく結句専一の事などを、わするるものなり。尤も墨筆懐中あるべし。万事覚書のためなり。

古川哲史監修『戦国武士の心得*『軍法侍用集』の研究』(2001,ぺりかん社)

「敵国の法律の内容、軍備の状況、合言葉、敵の大将や部隊長の顔をよく見て知るようにし、旗や幕に描かれている紋、道筋、山河、家までも絵図に書くなどしてから帰るべきだ」とのこと…!

これはつまり、スラスラっと絵が描けなければいけないということでしょう。

描いたはいいけどその絵が下手くそすぎて判別できなければ、忍者としては任務を遂行できないのでイタイ忍者ということになってしまいます。

絵が下手だけど…不忘の術とか使えばきっと大丈夫だもん…!えっと城内にいる馬が14匹、衛兵は1刻ごとに2人が交代。旗は桔梗紋、あっちの旗は雁金。腕に傷つけてっと…よし覚えたぞ!今のうちに帰…

あっ!くせ者だー!!追いかけろー!!!

わぁあぁぁ…!城外から違い鷹と矢車の家の兵が12匹の馬に乗って追っかけてきた−!逃げろー!!



ふう、なんとか逃げられた…。あれ、馬12匹だっけ?14匹だっけ?矢車と桔梗紋だっけ?しまった忘れた… !

と、記憶力に自信があるおぬしも、こんな風に忘れてしまう可能性だってありますからね。

「あちらこちらに気を配り過ぎても、記憶ができずに結局重要なことなどを忘れてしまうものである」という人間の本質を説き、やはり「墨と筆を懐の中に入れておいてすべて覚書を書け」と言っています。

正忍記の初巻「忍ぶ出で立ちの習い」に出てくる「忍び六具」の中にも「石筆」として筆記用具を持っていくように書いてあるので、忍者にとっては筆は必需品になっているようですね。

教えのとおり絵にまとめると以下のような感じでしょうか。

大将の顔の人相を描くのとか、山とか河の絵を描くのとか、難易度は高めですね…。

現代はスマホでパシャッと撮ってしまえばよいですが、無理に覚えようとせず「記憶より記録が大事!」ということを覚えておきましょう!

なお、記述に対する解釈は筆者の読解力不足により誤っている可能性もありますので、そこのところは多めに見てください。すみません…。

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